組み立てが終わったティーガーI(タミヤ)の塗装を行います。
今回の塗装は迷彩塗装とかを行う前にやる「下地塗装」というもので、これをやると塗料の乗りが良くなったり、色の明暗差を出してより立体的に見えるなど、塗装後の戦車模型のリアリティ向上に期待できます。
今回は現在製作中のタミヤのティーガーI(後期型)を使って、「下地塗装」についてご紹介致します。
なお、今までのティーガーIの製作日記については下記リンクから読むことが出来ます。
戦車模型の下地塗装をします
戦車模型の組み立てが終わったら次は「塗装」をします。
ことドイツの戦車プラモは他国の戦車と違い、複数の色を使った「迷彩塗装」を描くことが多いです。でも、いきなり車体色や迷彩色を塗るのではなく、まずは下地塗装から行います。
下地塗装もモデラーによって様々なやり方がありますが、今回はエアブラシを使って、以下の4種類の下地塗装を行いました。
- サーフェイサー塗装
- 離型剤の塗装
- 影の塗装
- ハイライト塗装
これらの下地処理は省くことも可能ですが、よりクオリティの高い模型作品を作りたい場合は検討すべき技法です。
いずれもエアブラシがあれば出来る内容で、その多くが全体に満遍なく塗るだけなので、比較的かんたんに行うことができます。
また、エアブラシを持っていない方も、4番目のハイライト塗装以外は缶スプレーでも可能です。
さて、それではエアブラシ塗装に必要なアイテムを色々準備します。
- 塗料
- 溶剤
- 新聞紙
- マスク(防毒マスクならなおよし)
- サーフェイサー
- 塗料カップ
- かくはん棒
- スポイト
- 試し吹き用のメモ用紙
- ティッシュペーパーまたはウエス
- 離型剤
- エアブラシ洗浄用の筆
などなど。
また、今回は塗装を上達させたいと思って買った「仲田師匠のプラモ道場 エアブラシの使い方」を参考にしながら塗装していきます。
本書はタミヤの「ティーガーI(後期型)」を使って解説しているので、今回のティーガーI製作において非常に参考になりました。
もちろんティーガーI以外の車輌を作ってる人でもエアブラシの扱い方や塗装方法が学べるので、エアブラシ初心者にとって必読書といっても過言ではありません。
こちらは愛用のGSIクレオス MR.リニアコンプレッサー L5。
今までこの子で戦車プラモを4つほど塗装をしていますが、連続使用が可能な上に音が静かというスグレモノ。ただ、エアレギュレーター付近からエア漏れしているみたいでシューっと音がしているのが気になります。
使ってる上で特に問題はないですが、近いうちにチェックしておかねば…。
前置きが長くなりましたが、それでは下地塗装を開始します。
サーフェイサー塗装
まず最初に行ったのはサーフェイサー塗装です。
今回は金属パーツ(金属砲身やエッチングパーツなど)が無かったので、最初にサーフェイサー塗装をしましたが、もし金属パーツがある場合は先に「メタルプライマー」を塗るのを推奨。
サーフェイサーを塗る5つの理由
サーフェイサー塗装の目的は幾つかありますが、一般的にいわれているのは主に以下の5つです。
- 塗装対象の色を均一にする
- 車体の凹凸やキズを浮かび上がらせる
- 細かい傷を埋める
- 塗料の食いつきを良くする
- 薄いパーツの”透け”を防止する
「傷を浮かび上がらせる」と「細かい傷を埋める」では矛盾しているようにも見えますが、もともとサーフェイサーとは、パーツの補修などに使う「ラッカーパテ」のようなものを塗料レベルに液体化させたものです。
そのため、ヤスリなどで均した際に発生する細かいキズを埋める一方で、パーツ同士を貼り合わせた時に出来るラインや押し出しピン跡などを浮かび上がらせてくれます。
全体に塗装するだけでなく、押し出しピン跡がしっかり消えているか、パーツを貼り合わせた時に出来たラインを修繕出来たかなど、パーツの整形をチェックする時にも使用します。
…というのが模型におけるサーフェイサーの使用目的ですが、絶対必要というわけではなく、サーフェイサーを塗らずに塗装する人もいますので、そこは個々の判断に委ねます。
が、私の場合は戦車模型を使用するときはサーフェイサーを必ず使用しています(理由は後述)。
ガイアノーツ サーフェイサーEVO(オキサイドレッド)を使用
ということでサーフェイサーを塗っていきます。使用するのはガイアノーツのサーフェイサーEVO(オキサイドレッド)です。
このオキサイドレッドは先述のサーフェイサーを塗る目的に加えて、実物ドイツ戦車におけるサビ止めプライマーを再現できます。
言ってみればプラモデルと実物戦車のダブルの下地処理を1度に行えるわけで、時間短縮になるのはもちろん、車体の塗装の剥がれを再現したい人にもオススメなサーフェイサー。
私はこの実物戦車のように下地処理が出来るという理由で、戦車模型を作る時は必ずサーフェイサーを塗っています。
なお、エアブラシを持っていない人はGSIクレオスからスプレータイプが出ているので、そちらを使うことで同様の下地処理が可能となります。
サーフェイサーは原液だと濃すぎるので、ラッカー溶剤で1.5倍ほどに薄めて使用します。
また、いきなり模型に吹かず、紙などに試し吹きをして噴射量や濃度をチェックします。
塗料の濃淡やエア噴出量が調整出来たら塗装を開始します。まずは車体の底面からスタート。
実際やってみるとわかるのですが、紙に吹き付けるのとプラスチックに吹き付けるのとでは勝手が違います。
紙の上では丁度良かったけど、実際にパーツに塗ったらビチクソになった!というのはよくある話で、そうなる原因は
- ハンドピースの距離が近すぎる
- 塗料の放出量が多すぎる
といったパターンが多いので、塗料の放出量やハンドピースの距離を試し吹きでしっかり確認しましょう。
また、車体の底面は面積が広いので、噴出量を増やして一気にバーッとやりたくなるところですが、ビチクソになりやすい上に塗料を消耗するので、グッと理性を抑えて細吹きします。
一通り車体底面や転輪・サスペンションを塗ったらそのまま履帯も塗っていきます。
履帯は車体やその他のパーツと違ってテカテカのブラックなので、塗料が乗りにくい(塗っている感じがしない)ですが、焦らず少しずつ色を重ねていきます。
また、履帯は見ての通りデコボコしているので、色んな角度から吹き付けて塗り残しの無いようにします。
そのまま転輪も塗ります。塗る順番としては最初に塗りにくい奥まった部分から塗ります。
理由は手前を先に塗ってしまうと、奥を塗るときに手前部分にも塗料が乗って色が重なって濃くなってしまうからです。
特に履帯の奥やサイドフェンダーの裏側、履帯と車体の間の隙間などは奥まった部分だけに塗装が困難な場所です。
なんとか塗料が行き渡るようにハンドピースを素早く小刻みに動かしながら吹き付けます。
足回りの塗装が終わったら車体に移行します。
車体部分は足回りに比べると奥まった部分が少ないので、比較的簡単に塗装することができます。
フェンダーの端っこは実物車両っぽくするため薄く削ってペラペラにして、衝撃でひん曲がったのを再現しましたが、ラジオペンチで曲げたので、ペンチの痕がサーフェイサーによって顕著になりました。
こうならないようにラジオペンチで挟む時は間にティッシュなどを噛ませましょう(自戒の念)。
その他、小枝や障害物などによる引っかき傷の再現もサーフェイサーのおかげで目立っています。
ということで車体部分のサーフェイサー塗装が終了。使用したサーフェイサーはハンドピースのカップ8分目×2くらいでした。
なお、本来なら砲塔が乗って隠れてしまう車体内部ですが、念のためサーフェイサーを吹き付けてやりました。
戦車の内部は暗いので白系の色が使われていたとのことですが、そこまでするのは大変なのでサーフェイサーだけ。
続いて砲塔も同じようにサーフェイサーを吹き付けます。
こちらも足回りに比べると奥まった部分が少ないので楽勝ですが、予備履帯の隙間やキューポラから見える足場の塗り残しには注意。
サーフェイサーを塗った砲身。
砲身は合わせ目のスジを消すために紙ヤスリで削ったあと、更にラッカーパテを盛って整形しましたが、入念な整形の甲斐あってスジはキレイに消えております。
本当は砲身を整形した直後にサーフェイサーを塗りたかったのですが、あいにく缶スプレーのサーフェイサーを切らしており、砲身だけにエアブラシを使うのもどうかと思ったので後回しにしました。
ティーガーI本体だけでなく、乗せる兵士フィギュアや、車載機銃も同様にサーフェイサーを塗ります。
…が、小さいパーツなので普通に吹きかけようとすると吹っ飛んでしまうので、マスキングテープなどに貼り付けた状態で塗装します。
以上でサーフェイサー塗装が完了です。
離型剤を塗装が剥がれやすい場所に筆塗りする
サーフェイサーを塗ったあとに次の塗料! …といきたいところですが、ここで「離型剤」を塗ります。
離型剤とは、レジンでパーツを複製するときに、複製したパーツを型から剥がしやすくするために使用するものです。
これをサーフェイサーの上に塗ることで、迷彩塗装後に爪楊枝などで軽く引っ掻けば簡単に塗装の剥がれを再現することが可能になるのです。
使用するのはGSIクレオスのMr.シリコーンバリアー。
これを筆にとり、フェンダーやハッチ周辺、マフラー、エッジ部分など、塗料が剥がれやすそうなところに塗ります。
塗装の剥がれは塗料を染み込ませたスポンジで行う「チッピング」という技法もありますが、離型剤を使えば本当に塗装を剥がすので、よりリアリティを出すことができるのです。
影の塗装
続いては「影の塗装」とか「シャドー吹き」と呼ばれる塗装をします。
その名の通り、車体の凹凸によって「影」ができる部分を作るための塗装ですが、影の塗装は主に以下の3つの目的があります。
- 塗料がいき届かない奥まった部分をカバーする
- 後述のハイライト塗装と併用して車体の明暗を際立たせ、より立体的に見せる
- パーツの”色透け”を防いで重量感を出す
この影の塗装も車体全体に塗る人もいれば、影になるところのみ行う人もいます。
今回は前者の車体全体を塗装することにしました。
Mr.カラーの『マホガニー』を使用
影の塗装で使用する塗料はMr.カラーのマホガニー。これを車体全体にまんべんなく塗ります。
この作業も前々項のサーフェイサーと同じく車体全体に塗装するので、缶スプレーでも行えます。
その場合、サーフェイサーを塗ってから缶スプレーでマホガニーを塗るのもアリですが、マホガニー色のサーフェイサーもあるので、前項の離型剤を使用した塗装の剥がれを再現しない場合はそちらがおすすめ。
…というより、これまでの手順は以下のマホガニーサーフェイサー1本ですべて出来るので、正直今までの苦労は何だったんだろうって気分になります。
参考までにマホガニーはこんな感じの焦げ茶色。
マホガニーとは高級家具などに使われる木材(桃花心木)のことですが、実際に塗ってみると木というよりはチョコレートのような色でした。
余談ですが、マホガニーを使用した影の塗装は2作目の「4号対空戦車 オストヴィント」を塗装した時以来となります。
それ以降はサーフェイサー(オキサイドレッド)の上にイエローを塗って明暗差を出すというのは何度かやってますが、オキサイドレッドよりも暗いマホガニーではどれだけ効果があるか楽しみです。
サーフェイサーと同じように車体の底面から順番に塗っていきます。
写真は車体底面と転輪・履帯まで塗装を終えた段階ですが、履帯とフェンダーの間にある奥まった部分がマホガニー塗装によって見えなくなっている点に注目。
サーフェイサーを塗る時の写真と見比べてみればその差は一目瞭然。
マホガニーを塗る前は色が明るいため、履帯とフェンダーの間にある奥まった部分にあるモールドも見えてました。
奥の方はエアブラシ・筆塗り問わず、どうしても塗料が行き渡りにくい場所なので、影の塗装は塗り残しをカバーするという効果もあります。
更に履帯はマホガニーによって茶色っぽくなっているので、ここに暗いグレーを塗ることでより履帯らしい絶妙な色に仕上がります。
…などなど、影の塗装は構造的・技術的に難度の高い部分の塗装をフォローしてくれるため、初心者の方にも是非オススメしたい下地塗装です。
日が沈んで暗くなったので中断
取り急ぎ、ティーガーIを全体的にマホガニーで塗装しましたが、塗ってる途中で日が落ちて薄暗くなってしまったので作業を中断。
残りは次回に持ち越すことにしました。
よく見るとまだ下に塗ったサーフェイサーの赤い部分がところどころ見えているので、影の塗装ももう一度明るい時に行います。
砲塔後部のゲペックカステン(用具箱)も塗り残しがちらほら…。
オキサイドレッドとマホガニーは色は違いますが、薄暗いと判りづらいのでどうしても塗り残しが出来てしまうのです。
なので先述の通り、次回の塗装時に影の塗装の続きおよび、影の塗装後に行うハイライト塗装を行い、その後迷彩塗装を行います。
日を改めてリトライ
…ということで、日付が変わって10月15日、中途半端に終わった影の塗装を再開し、車体全体にマホガニーを行き渡らせました。
更に下地塗装を続けます。
ハイライト塗装
前項ではマホガニーによる「影の塗装」で車体の暗い部分を作りましたが、今度は逆に日光が当たって明るくなるであろう場所に「ハイライト塗装」をします。
具体的には車体塗装に使う色よりもより明るい色を日が当たり明るくなる場所に塗って明暗差を出すというものです。
この明暗差をハッキリ出すことで、車体をより立体的に見せる効果があります。
当初、この明暗差を出す下地塗装は、迷彩塗装をすることで消えてしまうのでは? と思っていましたが、細い曲線で構成される迷彩パターンだと、車体色が多く残るので有効だということがわかりました。
微細なグラデーションやコントロールが必要となるために「エアブラシ塗装」を使った塗装となりますが、前項までの下地塗装はエアブラシを持ってない方でも可能なので、興味があれば是非試してみてください。
まずは「イエロー」単体でハイライト
車体色に使用するのは「ダークイエロー」なので、黄色系でより明るい色をマホガニーの上に乗せていきます。
私は上の写真のように「イエロー」を使いましたが、参考にした動画ではもっと明るい「サンシャインイエロー(ガイアノーツ)」を使用していました。
このイエローを日光が当たって明るくなりそうな場所に吹き付けていきます。
注意したいのは、下地が暗い色なので、塗料の乗り具合がわかりづらく、ビチクソになりやすいという点。
なので塗料の噴出量やハンドピースの距離の調整はもちろんのこと、同じ場所にずっと吹き付けるのではなく、少しずつ薄く色を重ねていくよう心がけます。
また、イエローを塗る時は
- 砲塔の上面は色を濃く塗った
- 突起の根本などはマホガニーを残した
- 上2つの境目は薄く塗ってグラデーションを描いた
- 砲塔側面などは上から下に向かって吹き、下に行くほど暗くなるようにした
…という具合に塗る塗らないを0と1とするのではなく、0と1の間にグラデーションを入れてみました。
さらにホワイトを微量加えて明るくする
次にイエローにほんの少しだけ「つや消しホワイト」を混ぜてより明るい(白に近い)色を作り、砲塔上面のハイライト部分に塗ってみます。
この下地塗装は初の試みなので果たして効果はあるのだろうか。答えは車体塗装時にて。
このように濃くイエローを塗った部分の中心部に薄くモヤモヤと吹いていきます。
明るい色を塗っているのでクッキリと色の差を出すのではなく、ボカしてグラデーションを描き境界線を曖昧にすることをイメージしながら塗装しました。
同じように砲塔の上面の明るくしたい場所に吹き付けて1段階明るくします。
「そこ明るくすんのかよ!」とか逆に「そこ暗いままかよ」って突っ込まれそうな気もしますが、ひとまずコレでハイライト塗装を完了します。
あとは本番の塗装で車体色を塗ったときにどう変わるか…ですね。
まとめ
今思うと、サーフェイサー塗装、影の塗装をエアブラシで全体的に下地塗装を行いましたが、その後にも本塗装で車体色のダークイエローを全体に塗ることを考えると、エアブラシでは時間がかかり非効率的でした。
なので、このパターンの下地処理をする場合は、缶スプレーを使った方がエアブラシ塗装の準備の手間も省けて早く済みそうです。
特にマホガニー色のサーフェイサーを使えば、この記事で数時間かけて行った作業が30分程度で終わるという非常に切ない結果になります。
とはいえ、じっくり時間をかけてサーフェイサーからハイライト塗装まで行うことで次の本塗装で「明暗差」を出すことができ、単調ではない車体色が出来上がるのではないかと思ます。
この辺は自己満足なところもありますが、色々試してベストな方法を探してみると良いと思います。その方が模型製作は楽しいです。
ということで、今回は車体塗装の前の準備である下地塗装を行いました。次はいよいよ車体塗装と迷彩塗装です。果たして上手くいくのでしょうか。