どうもこんにちは。皆さん戦車作ってますか?
今回は戦車プラモデルの「履帯」の中でもよりリアルな足回りを再現できる「可動式履帯」ついて書いてみます。
製作しているタミヤの4号駆逐戦車/70(V) ラングの履帯をキット付属のものではなく、モデルカステンの『可動式履帯』を使って組み立てたのでご紹介します。
今回の記事では、
- 可動式履帯の特徴・魅力
- 可動式履帯(モデルカステン)の組み立て
- 履板の枚数による履帯の”たるみ”方の違い
などについて書いてみました。
可動式履帯のココがすごい!
可動式履帯はその名の通り「動く」履帯です。
実物の履帯に似た構造になっていて、デコボコの地形に馴染む足回りを再現出来るのが特徴です。
まずはこの写真を見て欲しい。
ね?すごいでしょ?
本物の履帯のように垂れ下がり、地形に合わせて形を変える。これが可動式履帯なのです。
本物の履帯に近い構造だからリアルな足回りが作れる
キット付属のベルト式履帯や連結式履帯もクオリティは高いですが、”自由に動く履帯”を再現するのは困難です。
それもそのはず、可動式履帯は履板同士を”接着”するのではなく、履板と履板を『ピン』で固定するという実物に近い構造をしています。
なので実物の履帯のように重力に従って垂れ下がり、地面に沿って形を変える。それが可動式履帯なのです。
ジオラマやヴィネットなどの「情景作品」をつくる人の強い味方
戦車プラモデル単体作品はもちろん、ジオラマやヴィネットといった「情景作品」において魅力を最大限に発揮します。
「デコボコな荒れ地を走る戦車の履帯」をイメージしてみてください。
この”波うった履帯”を作ろうとなると、組み立ての段階でデコボコの地形に合わせ形状に履帯をセッティングしないといけません。ものすごく大変です。
一方、可動式履帯の場合「置くだけ」で地形に順応した形が出来るので非常に楽です。
可動式履帯の組み立てかた
可動式履帯の魅力についてあれこれ語り散らかしたので、ココから本題に入ります。
冒頭に書いた通り、モデルカステンの可動式履帯を組み立て、タミヤの”ラング”こと『4号駆逐戦車/70(V) ラング』に取り付けます。
リアルな足回りを再現してくれる可動式履帯ですが、同時に他の履帯よりも組み立てに一手間かかります。
なので作り方(組み立て)をじっくり解説していきます。
実物の4号戦車の履帯が何種類もあるように、モデルカステンの可動式履帯(4号戦車用)も数種類あります。
今回はタミヤの「4号駆逐戦車/70(V) ラング」を作るので『IV号戦車用履帯 最後期型[軽量型] (SK-27)』を選びました。
箱絵にもちゃんとラングが載ってるから間違いない(今回作るのは”V”だけど)。
まずは付属品を確認
それでは開封して内容物を確認していきます。
モデルカステンの可動式履帯の場合、以下のものが同梱されています。
- 履板パーツ
- ピンパーツ
- 遊動輪回転用パーツ
- 組み立て用治具
- 各種説明書
説明書
こちらは組み立て説明書です。
「付属の『治具』に履板を置いて左右からピンを差し込んでね」といった内容。
履板の向きや差し込むピンで迷ったらこれで確認しておきましょう。
こちらは遊動輪や転輪を可動式にするパーツについての説明書です。
後述するパーツを組み込むことで、実物の遊動輪や転輪のように回転したり、遊動輪アームを可動式にして調整機能が付与されます。
…ただ、今回のラングは元から転輪も遊動輪も回転する仕様だし、アームは既に車体に接着してあるため、こちらは使用しません。
こちらはモデルカステンの可動式履帯の適合表(4号戦車用)。
「モデルカステンの履帯使いたいけど、どのタイプを買えば良いかわからない…」って人のためのもので、各種履帯の形状と使用されていた年代、使用された車輌がまとめてあります。
非常に役に立つ一覧表なので、履帯を作り終えた後も参考資料として保管を推奨。ショップの商品説明ページにこれ掲載して欲しい。
各種パーツ
次はパーツ類を見ていきます。
まずこちらは履板パーツ。これに後述のピンを差し込んで履板同士を接続し、1本の履帯を作ります
履帯はいわゆる「最後期型」で、ところどころに軽量化のための肉抜き加工がされているタイプ。
4号戦車 J型の最後期や、4号駆逐戦車、終戦間際に作られた4号戦車派生車輌はこのタイプの履帯を使用していたそうです。
つづいて「ピン」のパーツです。
実物の履帯は1本のピンで接続しますが、可動式履帯の場合は小さいピンを履板の左右から通して固定します。ピンは2種類あり、ピンヘッドのモールドがある方(ランナーの「2」の方)が外側に来るようにします。
また、よく見ると「1」の左横に小さな円形のパーツが付いていますが、これを転輪を固定する軸の頭に接着することで転輪が回転するようになります。
ただ今回つくるタミヤのラングはデフォルトで転輪が回転するようになってるので、このパーツは使いませんでした。
こちらは治具です。
この上に履板を並べて固定し、横からピンを差し込んで行くという流れです。
ただ、治具は1度に8枚しか置けず中途半端なのと、治具を傾けると履板が外れるので、私は自作の治具を使って作業をします(後述)。
こちらが遊動輪を回転させたり、遊動輪のアームが動くようになるパーツ。
説明書に従って本体側に加工をすることで取り付けができ、実物の遊動輪のように回転したりアームが動いて調整機能がつきます。
でも先述の通りタミヤのラングは遊動輪は元から回転するし、軸も既に接着しているので今回こちらは使いません。
…と、中身をあらかた確認したので、組み立てに入りましょう。
履板を切り離して整形する
履板は上の写真のようにランナーにくっついてるので、まずはこれを切り離して整形します。
ランナーから切り離す時、根本を切ろうとすると履板のピン穴が潰れるので、少しだけランナーを残して切り離しました。
切り離したらナイフと紙やすりを使ってゲートの処理をします。この作業だけでかなりの量なので、1日ノルマ50枚でやってました(それでも結構ハード)。
履板にピンを通して接続する
次に切り離した履板の穴に「ピン」を通して接着します。接着剤のつけすぎに注意。
ピンは向きがあり、車体に対して外側はピンのヘッドがモールドされた方を使います。
自作のツールを使って作業すると楽チン
履板の組み立ては付属の治具ではなく、自作のツールを使ってやってます。
板に粘着力を落とした両面テープを貼ったもので、ここに履板を並べればひっくり返しても履板は落っこちません。
この自作簡易ツールは可動式履帯だけでなく、連結式履帯を組み立てる時も使ってます。
ちなみに今回は板も両面テープも無かったので、そこら辺にあったマスキングテープを輪っかにしてそこら辺にあった定規に貼りつけて使ってます。…適当である。
というのを繰り返して10枚つなげてみるとこんな感じ。
…なんだかゲジゲジみたいですね。こんなのが風呂場とかに置いてあったら悲鳴あげます。
ちなみにピンの不要部分(ゲート)は軽くひねるだけで簡単に取れますが、しっかり接着させるため、不要部分の切除は一番最後に行います。
量が多いので焦らずじっくり作ろう
最強の足回りが作れる可動式履帯ですが、短所もありまして、とにかく作業量が多いところにあります。
作業自体は難しくないですが、いかんせん履板を切り離して整形するだけでも時間がかかり、そこから並べてピンをブスリ…。
あまりに作業量が多いので何日かに分けてコツコツ履板をつなげていきます。
日をまたいで作業再開する時に「あれ、どっちだっけ?」とならないようにマスキングに向きをメモっておきます。
また、一度に全部つなげると「今何枚だっけ???」ってなるので10枚~20枚単位で小分けしておくことをオススメします。
50枚つなげて見るとこんな感じ。ゲジゲジからムカデにランクアップしました。
これでもまだ半分なので、焦らずノンビリ動画とか見ながら組み立てます。
さらに追加して履板を100枚つなげました。
モデルカステンの説明によると、4号戦車の履板は99枚~100枚が標準とのことで、とりあえず100枚つなげてみた次第です。
ねじってピンのゲートを外そう
履板を全部繋いだのでここでピンの不要部分(ゲート)を外していきます。
先述の通り、接着したピンの不要部分は軽くひねるだけで簡単にポロポロ取れてくれます。なかなか楽しい(笑)。
もしここでピンごとすっぽ抜けてしまった場合は焦らず再接着します。
これで片側分の履帯が出来上がりました。
履帯の垂れ下がり具合を検証
さてさて、片側分の履帯が出来上がったので「ラング」に取り付けてみます。
でも、ただ装着するだけでなく、可動式履帯を使うとどんなふうに履帯が垂れ下がるのか、履板の枚数ごとの履帯の垂れ下がり具合をチェックしてみます。
まずは転輪に巻き付けよう
出来た履帯を戦車本体に取り付けます。
起動輪の歯に履帯の穴を噛ませてスタートさせ、転輪下部を通過して、遊動輪でターンして、上部転輪の上を通って、また起動輪。
…という感じですが、可動式履帯は引っ張る力に弱く、無理に通そうとすると履帯が切れてしまいます。
なので少しでも引っかかりを感じたら無理せず、引っかかってる部分を優しく持ち上げて、かる~く引っ張ってあげてください。
特に4号戦車系は上部支持転輪とフェンダーのすき間が狭いので通す時に注意。
履板100枚だと多すぎる
まずこちらは履板の枚数を100枚にした場合の履帯のたるみ具合です。
すごくデロンデロンですね…。こんな状態で走ったら振動で履帯外れそうです。さすがにこれは多すぎる。
先述の通りモデルカステンの説明では99~100枚が標準とのことですが、この調子だと99枚でも多すぎる気がする。
枚数を減らして97枚にしてみると…
100枚では多すぎたので、そこから3枚ひっこ抜いて97枚にしてみた。
派手な垂れ下がりは無いものの、上部支持転輪の間に緩やかなたるみが出来ていて丁度いい感じです。
参考までに4号駆逐戦車 ラング(V)に付属するベルト式履帯を取り付けるとこんな感じ。
これだと履帯上部がフラットすぎますね。組みやすさを取るか履帯のリアルさを取るかのトレードオフですね。
とはいえ、(比較対象が可動式履帯だから変に見えるだけで)ベルト式履帯単体で見ると上部支持転輪から履帯が派手に浮いてるわけでもなく、組みやすさも加味するとこれは全然アリ。
間を取って98枚にしてみると…
1枚追加して98枚にしてみるとこんな感じ。
こちらも100枚ほど大げさではないものの、97枚と比べて上部転輪の2個目から3個目にかけて結構たるんでいます。
うーん迷うなぁ…。
色んな人の作例を見ても上部支持転輪が4つのタイプはそこまで垂れ下がってる感じは無いけど、転輪3つタイプは参考になるアングルの写真が少ないし、あったとしてもシュルツェンで隠れてるものばっかり…。
3時間くらい迷いましたが、とりあえず今回は97枚で様子を見ることにします。
そして同じように反対側の履帯も97枚つなげてやりました。
なお履帯は車体に取り付けたままだと何かの拍子に切れそうなので、上の写真のように丸めてマスキングテープで固定して保管しておきます。
もちろん左右がわかるようにメモっておくのも忘れずに。
「予備履帯」用の履板は無いので注意
せっかく履帯を可動式履帯にしたんだから、余った履板で「予備履帯」も作ってやろう。
…と思ってたんですが、残念ながら予備履帯に必要な枚数(17枚)は残ってなかったので、予備履帯はタミヤのラングに元から付属するパーツを使いました。
ラング本体のキットに付属する予備履帯は1つのパーツで構成されています。これを車体後部のパネル上部にあるラックに引っ掛けます。
可動式履帯の余剰パーツで「予備履帯」をディテールアップ
予備履帯はモールドがしっかり入っていますが、気になるところがあったのでそちらを追加で加工してやりました。
まずは予備履帯先端の側面。
本来なら開いてるはずのピンを通す穴が無かったので、ピンバイスで穴を開けてやりました。
同じように後端にもピンバイスで穴を開け、可動式履帯の余ったピンを差し込んでやりました。
細かいところではありますが、気になった以上は何もしないわけには行くまいということで追加の加工でした。
こういうディテールアップもプラモ製作の楽しみなのです。
組み立ては大変だけど最高にリアル、それが可動式履帯
履板を切り離し、整形して、ピンを通す…を片側100枚近くやってたのでメチャクチャ時間がかかりました。
動画見たりしながらダラダラやってたので、恐らく1週間くらいは履板に費やしていたと思います。気張っても仕方ないのでゆっくり少しずつ作るのが良いのです。
でもその苦労に見合った超絶リアルな足回りが実現出来るのが可動式履帯の魅力であり、可動式履帯を作る楽しさです。
履帯の「たるみ」だけなら連結式履帯でも再現することが出来ます。しかし、「接地面」の履帯の波打った形状を再現するのは非常に大変です。
先ほども書きましたが、ジオラマやヴィネットを作る場合、デコボコの地面の上に車輌を乗せますが、そのとき履帯が”フラット”だと不自然で、地面の凸凹に合わせて履帯も波打った形にします。
そういった説得力のある足回りを再現するのに可動式履帯が大活躍というわけです。もちろん私のように戦車プラモ単体を作る場合でも可動式履帯は活躍しますけどね。
そしてこれで履帯も完成したので、ラングの組み立ては完了しました。
………ただ、あくまで説明書に記載の組み立てが終わっただけで、組み立てとは別にあちこち「ディテールアップ」をしています。
そちらも後日まとめたものをご紹介します。
でも今は可動式履帯の組み立てが終わって美しい足回りが出来た余韻に浸りたい(笑)