タミヤのティーガーI(後期生産型)を製作していますが、もうすぐ組み立てが完成しそうです。
珍しいですね、いっつもあーだこーだ理由つけてサボって遅延が発生するのに、今回はわりとすんなり進んでいます。
↓今までのティーガーI製作日記はこちらから読むことができます。
さて、今回はティーガーIの砲塔に、ドイツ戦車特有の仕様である「ツィンメリットコーティング」を施します。
この記事では主に以下の内容についてご紹介します。
- ツィメリットコーティングとは
- 戦車プラモにツィメリットコーティングをする方法
- コーティングしたあとのパーツの取り付け
ツィメリットコーティングのやり方についての解説だけでなく、その前後の手順も書いてみました。「ツィメリットコーティングしたいけど、やり方わかんない…」という人は参考にどうぞ。
ツィンメリットコーティングとは
ツィンメリットコーティングは非磁性体のコーティングで、第二次世界大戦中のドイツ軍の戦車および、戦車の車体を流用した駆逐戦車や突撃砲などの車体や砲塔の表面に塗られていました。
ドイツの戦車の写真を見てみると、車体や砲塔の表面が波打ったようにデコボコしている場合がありますが、そのデコボコがツィメリットコーティングです。
目的は「吸着地雷」を引っ付かなくするため
ツィメリットコーティングの目的は、磁石を使用した吸着地雷を装甲に引っ付かなくすることです。
この吸着地雷はドイツ軍が開発した歩兵用の対戦車兵器で、永久磁石により敵車輌の装甲に取り付け、モンロー/ノイマン効果を使用して装甲を貫通・破壊するというもの。
シンプルなデザインながら、140mmの圧延均質装甲を貫通するという非常に強力なもので、ドイツはソ連にコピーされる懸念から吸着地雷の対抗策を考え、ツィメリットコーティングが誕生しました。
装甲に「厚み」を出すためのコーティング
さて、そんな吸着地雷の対抗策としてのツィメリットコーティングですが、「吸着地雷を装甲に引っ付かなくするにはどうするか」が課題です。
そこでドイツが出した結論は、甲装の上に非磁性体の物質を塗って厚みを出し、磁場が装甲まで届かないようにするというものでした。
硫酸バリウムやポリ酢酸ビニル、オガクズなどを混ぜ合わせたコーティング剤を車体や砲塔の表面に塗り、厚みを出すことで装甲に磁石がくっつかなくなるという仕組み。
ツィンメリットコーティングは、初期のものはただ単に塗るだけだったのですが、後に
- 被弾によるコーティングの剥がれを最小限にする
- より厚みを出す
- 軽量化
などの目的で碁盤やワッフルのような四角いものや、ギザギザと波打ったようなモールドになりました。
なお、コーティング表面に刻まれるギザギザのパターンは、形状から「ローラー」を使用したのではないかと言われていますが、作業中の写真や工具といった資料が無いため今も不明のままです。
ツィンメリットコーティングは1943年8月に正式化され、III号突撃砲、IV号戦車、パンター、ティーガーI、ティーガーII、ヤークトパンターといった戦車や突撃砲、駆逐戦車などに施されていました。
また、非公式ではありますが、既にコーティングが施された戦車を回収して作られた対空戦車や自走砲などもありました。
敵が「吸着地雷」を使わずあえなく廃止
ツィメリットコーティングは、先述の通り「吸着地雷」への対抗策として誕生しました。
ところが、連合軍が吸着地雷を使用しないことが判明し、コーティング剤を塗る作業や乾燥に時間がかかったり、重量の増加になることから1944年の9月9日に廃止されました。
なにしろ吸着地雷は仕様上、敵の車輌に肉薄する必要があるため、タンクデサントや随伴歩兵がいる状態で使えば自殺行為となるわけで、非常にハイリスクな兵器なのです。
懸念していたソ連はともかく、アメリカやイギリスにはM1バズーカやPIATなどの離れた場所や物陰から攻撃できる対戦車兵器があるため、わざわざ吸着地雷を採用する理由は無かったのです。
そして皮肉なことに吸着地雷を開発したドイツも、後に「パンツァーファウスト」や「パンツァーシュレック」といった無反動砲を使うようになり、吸着地雷は1944年5月に生産終了となりました。
敵が吸着地雷を使ってこない以上、ツィメリットコーティングは無意味となり、先述の通り1944年9月9日に工場でのコーティングが廃止され、それに続き同年10月7日に現地でのコーティングも廃止されました。
なお、現地の戦車兵から「砲撃によってコーティングが燃焼する危険性がある」という報告も廃止理由の一つとされていましたが、後にこれは誤りということが証明されます。しかしツィメリットコーティング廃止を覆す結果にはなりませんでした。
…以上がツィメリットコーティングについての解説となります。
「ティーガーI」の砲塔にツィンメリットコーティングをする
前置きが長くなりましたが、ここから先は戦車プラモデルにツィンメリットコーティングをする方法について解説していきます。
ツィメリットコーティングを施すのは現在製作中のタミヤの「ティーガーI(後期型)」。このティーガーIの砲塔部分にコーティングをします。
コーティングブレードを使ったツィンメリットコーティング
模型におけるツィンメリットコーティングは、先人モデラーたちが知恵を絞って様々な方法で再現しており、主に以下のような方法がありました。
- ラッカーパテを塗り、マイナスドライバーやヘラでパターンを刻む
- 熱したドライバーやヒートペンで直接パーツにモールドを刻む
- ポリエステルパテを塗り、レザーソウでコーティングパターンを刻む
- エポキシパテを塗り、市販および自作のローラーでパターンを刻む
- メーカーが販売するコーティングシートを車体に貼り付けて再現する
- あらかじめパーツにコーティングのモールドが入っているキットを選ぶ
などがあります。
私はこの中で3に近い方法でツィンメリットコーティングを施しており、ポリエステルパテを塗った後に、タミヤの『ドイツ戦車 コーティングブレード』を使用してパターンを刻みます。
それではティーガーIの砲塔にツィンメリットコーティングを施していきましょう。
用意するもの
ツィンメリットコーティングで使用するものは以下のとおりです。
写真左から
- ドイツ戦車 コーティングブレード(タミヤ)
- ポリエステルパテ(タミヤ)
- ラッカー溶剤
あとは写真にはありませんが、パテを調合したり模型に塗るときに使う「ヘラ」もあると便利です。
私は塗料を混ぜるときに使う撹拌棒(タミヤ)を使用していますが、ない場合は爪楊枝やアイスの棒でも代用できます。むしろ掃除の手間を考えると爪楊枝とかの方が楽かもしれません。
また、ラッカー溶剤はポリエステルパテを流動化させるので、パテを調合するときに2滴ほど垂らしてやると塗りやすくなる上、ブレードに付着したパテを除去する際にも使えます。オススメ。
ポリエステルパテの調合
ツィンメリットコーティングの再現はポリエステルパテを作るところから始まります。
タミヤのポリエステルパテは大きいチューブの主剤とオレンジ色のチューブに入った硬化剤の2種類で構成されており、これらを混ぜ合わせることでポリエステルパテが出来ます。
なお、ポリエステルパテの箱やチューブには、
プラバンなどの上に、主剤と硬化剤をそれぞれ同じ長さだけチューブから出します
…と、あります。同じ”量”ではなく、同じ”長さ”という点に注意。
ちなみに調合はプラ板ではなく、メモ用紙として代わりに使ってるカレンダーを折って厚くして使っています。
そのほか最近では牛乳パックをカットしたものも使っています。こちらはパテだけでなく塗料とか瞬間接着剤のパレットとしても代用できるし、大量生産可能なので非常に使い勝手が良いのです。オススメ。
で、これら2種類を混ぜ合わせると上の写真のような黄色いポリエステルパテが出来上がります。
説明には「主剤のキャップと同じような色になれば適正です」とありますが、キャップの色というよりも、納豆についてくるカラシの色になればOKと思ってやってます。
また先述の通り、調合するときにラッカー溶剤を1・2滴ほど垂らして混ぜることでパテの粘度が落ち、模型に薄く塗りやすくなります。
ポリエステルパテは5分もすると硬化が始まるので、一度にたくさん作らず、塗りたい部分だけ用意します。パテを作って、塗って、コーティングを刻むを何回か繰り返すわけです。
砲塔にポリエステルパテを塗る
ポリエステルパテが出来上がったら可及的速やかに砲塔へ塗りつけます。
この時パテはてんこ盛りにするのではなく、ヘラなどを使って薄く伸ばして均一に塗っていきます。
分厚くなるとコーティングのパターンが刻みにくくなったり、コーティングブレードにパテが付着しやすくなります。
また最終的にコーティングブレードで掻き出すので、厚塗りだとパテが無駄になるので注意。
こんな感じに砲塔の側面全体を覆うように塗っていきます。
ヘラを使ってパテを盛り、その上を優しく撫でるようにヘラを動かすことでキレイにパテが全体へ行き渡ります。
なお1回目は上の写真の見えている部分だけに塗ります。砲塔全周に塗ってしまうと作業途中で硬化が始まってしまいます。硬化が始まってから刻もうとすると、上手くパターンが刻めなかったり、途中でパテがポロポロと剥がれ落ちてしまいます。
慌てず焦らず少しずつやっていくのが一番のポイントです。
コーティングブレードでパターンを刻む
ポリエステルパテを砲塔に塗ったら、コーティングブレードでツィンメリットコーティングのパターンを刻みます。
コーティングブレードは0.7と0.5のブレードがそれぞれ大きさ別に3種類あります。
当初0.7と0.5は、模型のスケール(1/35か1/48か)で使い分けるものだと思ってましたが、それ以外にもティーガーの場合、車体と砲塔でコーティングパターンのピッチが異なるので、車体は0.5、砲塔は0.7という使い分けをするようです。
というわけで使用するのは0.7のコーティングブレード(大)。
よく見るとブレードの刃の間に硬化したパテが付着していますが、放置するとコーティングパターンがうまく刻めなくなるのでこまめに掃除してください。
コーティングパターンを刻んでいきます。コーティングブレードは左側から右側に向かって動かしていきます。
具体的な方法は、
- コーティングブレードを垂直に当てる
- 横へ5ミリほどスライドさせる
- コーティングブレードを上(下)に2ミリほどずらし、縦筋を入れる
- 再び5ミリほどスライドさせる
- 以下、2・3・4の繰り返し
となります。
なお、3~5回ほど横にスライドさせるとコーティングブレードにパテが溜まって上手くパターンが刻めなくなります。そういうときは一旦パターンを刻むのを中断し、ラッカー溶剤を染み込ませたティッシュでキレイに拭き取ってからリトライします。
実際のコーティングも人の手でやっているのでどうしても雑になります。多少曲がったり上手くパターンが刻めなくても問題はありません。むしろキレイ過ぎる方が不自然。
それでも刻んだパターンが気に入らない場合は、カッターナイフなどで剥がすことができます。何度でもチャレンジできるので安心して挑戦してください。
砲塔の左側面が終わったので、今度は右側面にもパテを塗ってコーティング。
後方にあるハッチはサイズの小さいブレードで行いました。
狭い場所のコーティング方法
砲塔や車体の側面などの「平面」はやりやすいけど、車体や砲塔の前面などは突起や段差などがあるので少々コツが要ります。
そんな時に使用するのはもちろん一番小さいサイズのコーティングブレード。
この小さいコーティングブレードは反対側もギザギザになってるので上手く活用していきます。
というわけで砲塔正面の防盾にも同じようにコーティングを刻んでいきます。
やることは砲塔の外周のときと同じで、横にスライドさせて縦筋を入れながらパターンを刻むだけです。…が、いかんせんデコボコしているので、スライドさせる向きを変えたりして臨機応変に対応します。
また、砲身(防盾)の基部は円を描くような曲線のパターンになっていますが、これはコーティングブレードの反対側で1つ1つ角度をつけるように刻むことで再現できます。
大戦当時のドイツのエンジニアも砲塔正面のデコボコにイライラしながらコーティングを刻んでいたのかもしれません。
同じく砲塔正面の右側もコーティング。左側と同じように防盾部分は円を描くようにパターンを刻みます。
なお、作業が進むほど手で持つ場所が減っていきます。作業に集中するあまりコーティングした場所を触ってしまった!なんてことにならないよう注意。
あらかじめ持つ場所を何ヶ所か決めておくと良いかと思います。
なお、私は上の写真のように砲塔天蓋と、砲塔内部にあるフィギュアを立たせるシートをつまむように持っていますが、これはこれで力を入れすぎるとシートの基部が折れるので気が抜けない。
…という具合に、砲塔の外周すべてにツィンメリットコーティングを施しました。あとは丸1日ほど放置してパテが硬化するのを待ちましょう。
コーティングの上にパーツを取り付ける方法
ツィンメリットコーティングが終わり、パテが硬化してから砲塔の側面に予備履帯を取り付けます。
今まではこの手の予備履帯は塗装してから取り付けていましたが、今回は先に取り付けることにしました。
予備履帯は履帯パーツについている突起を砲塔のダボ穴に合わせて取り付けるのですが、砲塔にはツィンメリットコーティングを施したため穴が埋まっています。
なのでまずはピンバイスなどで穴をほじくって復活させます。
一見、外からではどこに穴があるかわからないように思えますが、よーく見てみると「お、穴が埋まっとるな」って場所が見つかります。
穴を開けたら予備履帯の突起を差し込むように接着します。
ちなみに予備履帯は車体に取り付ける履帯と違って、押し出しピンの跡が目立つので紙やすりなどでしっかりピン跡を消してやります。
また、ポリエステルパテの上からだとうまく接着されないので、予備履帯をはめ込む穴の周りをカッターナイフで削ぎ落とし、プラスチック部分を露出させました。
削った部分は予備履帯で隠れますが、手が滑って必要以上に削っても予備履帯の摩擦で削れたってことにしておけば全く問題ありません。
また、履帯の上には履帯を固定するパーツを取り付けます。
これがなかなか小さくて神経を使うヤツなので、ピンセットや爪楊枝などを使ってうまく位置を合わせてやってください。
同じように左側面にも予備履帯を取り付けます。
右側面には2枚でしたが、こちら側には5枚。枚数が増えてもやることは同じ。
ということで砲塔左側面にも予備履帯を取り付けました。
まとめ
ツィメリットコーティングはドイツ戦車独自の仕様で、ドイツ戦車を作る楽しさの1つでもあります。
先述の通り、ツィンメリットコーティングの再現方法は様々ですが、私がやっているコーティングブレードをはじめ、ローラー、コーティングシートなどが現在は主流になっているようです。
それぞれ一長一短ある再現方法ですが、私はコーティングブレードを使った方法が面白いので、今はコレでやってます。
なお、砲塔に関してはまだ細かいパーツをチョロチョロつけたりしますが、この記事で解説すると長くなりすぎるし、タイトルからかけ離れてしまうので次回にします。