製作中の戦車プラモデルである「フラックワーゲン」は、戦車模型作りにおいて大きな工程である「組み立て」と「車体の塗装」がようやく終了しました。
組み立ては細かいパーツのオンパレードで苦戦するし、塗装は塗装で週末の悪天候続きで延長という具合でなかなか作業が進まず悪戦苦闘。
今回も波乱万丈な模型製作日記となりました。でもこうやって嘆いてる時もまた楽しいのです。
さて、今回のフラックワーゲン製作日記ですが、迷彩塗装以降の作業を一気に進めました。具体的に何をしたかというと、
- 車載工具や排気管、転輪のゴムといった細部の塗り分け
- デカールの貼り付け
- ウェザリング
- そして完成!
といった内容で、各工程のやり方や使用した塗料やツールも合わせて紹介しています。
今作ってる戦車プラモが「フラックワーゲン」なので、フラックワーゲンを使った解説となりますが、ここで紹介する内容は他の戦車模型でも応用できるので、プラモ作りのヒントとして参考にしてみて下さい。
↑今までのフラックワーゲン製作日記はこちらのページにまとめました
細部の塗り分け
ということで、車体塗装・迷彩塗装とは別に、車体の各所に残った細かい部品をアクリル塗料やエナメル塗料を使って筆塗りをしていきます。
具体的に何をするかというと
- 転輪のゴム
- 車載工具(OVM)
- 排気管
- 駐退復座機のレール
- その他パーツ
といったものを塗装していきます。
ちなみにフラックワーゲンは上の写真のように3面を装甲板で覆われていますが、当然ながらこの時点ではまだ接着していません。中に乗っかってる8.8cm Flak41への作業が一通り終わったらくっつけます。
ではまずは転輪のゴムから塗っていきましょう。
転輪のゴムの塗装
転輪のゴムはタミヤアクリル塗料のXF-1 フラットブラック単色で塗装します。
まずは撹拌棒(さじ)で塗料ビンから1杯塗料を取り、皿に入れたら溶剤を一滴垂らしてよくかき混ぜます。
転輪の数が多いので塗装のための塗料もまま使いますが、だからといって一度に出すと溶剤が揮発してパリパリになってしまうので、私は単色の場合は節約のために無くなったら継ぎ足すといった方式でやってます。
ゴム部分に筆を当ててゆっくり動かしていきます。
塗料の薄め具合にもよりけりですが、一発では完璧に塗りきれないので、塗って乾いたらまた塗るを2~3回繰り返して重ねていきます。
幸い今回のフラックワーゲンは転輪が可動式、つまり回転するので、転輪同士が重なった部分も難なく塗装することができました。
転輪は外側だけでなく、内側や履帯と接する面も忘れずに塗装します。「ここは隠れるからエエやろ」ってところが意外と見えるので気を抜かずに。
…なお、よく見るとあちこちで塗料がはみ出てます。極端にコースアウトするのはマズいですが、この程度なら後のウェザリングで誤魔化せるのでせふせふ。
OVM(車載工具)とライフルの塗装
続きまして、ジャッキやスコップといったOVMや、装甲板に引っ掛けてあるライフルを塗装していきます。
「OVMとライフルとでは違うだろ…」と思うかもしれませんが、両者に共通しているのは
- 鉄と木で出来ている
という点。なので、これらの色さえ再現できればOVMとライフルの塗装を同時進行で行うことが出来るわけです。
具体的には
- 木の塗装
- 鉄の塗装
といった2種類です。まずは木製部分の塗装からやっていきます。
木製部分の塗装
木の部分の塗装も単色ではなく複数の色を使いこなしてやっていきます。
まずはタミヤアクリル塗料のXF-57 バフで木の地肌の色を塗装します。
まずはライフル(モーゼル Kar98k)のストックにまんべんなく塗っていきます。実銃の写真を参考に、どこまでがストックなのかを確認しつつ。
広い部分は普通の筆でいけますが、色の境界線ギリギリは先日買ったばかりの面相筆で行いました。いやぁ面相筆めっさ便利。
…上の写真見てみるとあんまり塗った感じがしませんが、要はこの色は”木の板”のような色を再現したものです。この上に別の色を重ね塗りしてより「木」っぽくしていくのです。
同じようにOVMの柄の部分にもバフを塗っていきます。
車体色がダークイエローなので塗っている実感がわきにくいですが、塗り残さぬようハミ出さないよう注意しつつ塗っていきます。
あとはジャッキ台も「木」でしたね。
すぐ隣にジャッキ台があるし、それ以外もフェンダーや車体に阻まれて無茶苦茶塗りにくい鬼配置ですが、面相筆や塗料の流動化を上手いこと利用して塗っていきます。
木の下地塗装が終わったらその上に「ニス」の色を塗っていきます。
タミヤエナメル塗料の「XF-64 レッドブラウン」に「X-26 クリヤーオレンジ」を少量(2:1くらい)混ぜたものを使用します。
こんな感じにペタペタと塗っていきます。
これら下地やニスの色は、当ブログの模型ではすっかりお世話になっている仲田裕之氏の方法を参考にしています。
ベニヤ板のような木の色を下地色として全体に塗り、次に「ニス」を再現した色をその上に重ね塗りするというもの。実際の工具類の柄もそうなってますもんねー。
工具(ハンマーとかノコギリとか)は使ったことがあるので「そうなってますもんねー」と言い切れますが、ライフルもとい銃なぞ使ったことないのでこちらは「とりあえず同じにしとけ」と言います。
…冗談は置いといて、Kar98kのストックもやはり「木」なので同じようにやっていきます。
鉄の塗装
続いてボルト銃身など「鉄」の部分のを塗装していきます。
今までOVMの鉄色の塗装はタミヤアクリル塗料のガンメタルにフラットブラックを混ぜたものを使用しており、今回もそれでやってみました。
しかし、改めて見てみると、暗い色だけどメタリック系特有のギラギラ感があり、これはちょっと眩しいなと思い、今回は別の塗料(色)を使ってみることにしました。
どんな色かというと、タミヤアクリル塗料の以下の3色を混ぜ合わせた「黒茶色」を使用。
- XF-1 フラットブラック
- XF-52 フラットアース
- XF-64 レッドブラウン
これら3色を混ぜた「黒茶色」は履帯の塗装にも使いました。
この黒茶色は仲田裕之氏いわく、履帯だけでなくOVMの塗装でも使えるということで改めて使ってみたのですが、黒染めされた「鉄」の鈍い質感をいい感じに再現しており、こりゃ良いなと思いました。
なにより、塗料の使い回しが効くので作業効率の向上やあれこれ塗料を買う手間も省けそうです。
OVMの鉄の部分にも塗っていきます。やっぱりメタリック系のギラギラが無いと「鉄」って感じがします。
ちなみに上の写真のジャッキはガンメタル&フラットブラックで塗ってた時の色が残っているため、やたらギラギラ光っております。これではプラスチックのオモチャです…。
反対側のフェンダーにある手斧や牽引シャックルにも色を付けていきます。
…しかし、OVMは所狭しと設置してあるために塗りにくいったらありゃしない!
こちらは車体後部、リアパネルに取り付けてあるエンジン始動クランクや遊動輪調整用のレンチといったOVMたちの塗装。
見てわかるようにOVMの上を跨ぐように排気管が通っているのでこれもまたやり辛い。
フラックワーゲンをグルっと見回して、塗り残しが無ければOVMの塗装は完了です。
排気管の塗装
続いて、排気管の塗装をやっていきます。
今まで排気管って何色で塗装してたっけなーと思ったのですが、正直思い出せないので、相当適当にその日の気分で塗料を使い分けていたのだと思います(汗)
その日その日の気分で塗料を使い分けるのも塗装やプラモ作りの面白さではありますが、「この色!」ってのがあった方が作業がやりやすいのは確かです。
…で、今回は何を使ったのかというと、ファレホモデルカラーの#149 チョコレートブラウン単色で塗ってみました。すると上の写真のような“まま排気管らしい色”になりました。雨どいとか言わない。
また排気管の内側およびその周辺は、OVMの鉄の塗装で使った黒茶色の残りをチョロロっと塗ってみたところ、暗がり部分やスス汚れがいい感じに再現できました。
あとはこのままにするか、更に錆色を乗っけるかはお好み次第。
駐退復座機のレールの塗装
続いて、駐退復座機のレール部分の塗装をします。
駐退復座機なので、砲撃と連動して前後にガシャガシャ動く子です。そうなれば塗装はもちろん、その下の金属部分も摩擦で露出します。
なのでこの部分は鈍い金属の色に加え、それが摩擦で磨かれたような色になっているわけなのです。言うのは簡単ですが、問題はそれをどうやって再現するか。
ガンメタルだのメタリックグレーといったメタリック系に黒だの白だの混ぜてテスト塗装してアレでもないコレでもないと悩みつつ、最終的にMr.メタルカラーのダークアイアンを塗ったら上の写真のような色になりました。
このダークアイアンはなかなか面白いヤツで、最初は黒染めされた鉄のような色してるクセに、乾燥してからその上を綿棒などで擦ってやると鉄が研磨されたような色になるという。
まさに摩擦でガシャガシャ磨かれる駐退復座機のためにあるような色ですが、こやつはラッカー系塗料なのでニオイが強烈です。使用するときは寒かろうが雪が降ってようが必ず換気して使って下さい。
その他の塗り分け
最後に8.8cm Flak41に取り付けるイスのシート部分を塗装します。ここは転輪のゴムと同じフラットブラックの単色で塗りました。
シートは右側に3つ、左側に1つあります。
塗装が終わったシートはFlak41に取り付けます。
このシート(シートのパイプ)はフラックワーゲンのフォルム(走行・対空射撃・水平射撃)によって取り付ける角度が変わってきます。
今回は走行時のフォルムにしたので、シートは上の写真のように取り付けました。
デカールの貼り付け
さて、お次は「デカール」を車体や主砲に貼り付けていきます。使用するツール類は以下の通り。
- ピンセット
- 綿棒
- デザインナイフ(カッターナイフ)
- 水を入れる容器
- マークセッター
- マークソフター
こちらがフラックワーゲンのデカール。ざっと見ると、
- ドイツ軍おなじみの国籍マーク
- 8.8cm Flak41の射撃管制装置のメーター
- 戦術マーク(高射砲?)
- 8.8cm砲弾の薬莢部分のテキスト
- 砲弾ケースのテキスト
といった内容になっていますが、このうち使用するのは
- 国籍マーク
- 射撃管制装置のメーター
- 戦術マーク
の3種類のデカールのみ。何故砲弾関係のデカールを使わないのかと言うと、そもそも砲弾および砲弾ケースには一切手をつけていないからです。
フラックワーゲンの最初の記事でも述べましたが、8.8cm Flak41に使用する砲弾が「88×855R mm」であるのに対し、デカールには88x822R mm砲弾を使用する『KwK.43 Pak.43』とあります。
88x822R mm砲弾は対戦車砲であるPak43を始め、それを搭載するエレファント、ヤークトパンター、ナースホルン、戦車砲型のKwK43を搭載したティーガーIIの砲弾ですが、8.8cm Flak41のものとは別物です。
そういったことから、今回は使用せずに、この砲弾を使用する戦車(あるいは駆逐戦車や対戦車自走砲)を作る時が来たら手を付けようと思った次第です。
なお、デカールの貼り付け位置は説明書や付属の塗装例などに記載されています。
それではデカールを車体や主砲に貼り付けていきます。
デカールの貼り付け手順
まずはカットしたデカールを水の張った容器などに浮かべ、30秒ほど放置します。
そのあとピンセットなどでデカールの表面を抑えて軽く動かしてみます。この時にデカールが動けば貼り付けできる状態ですが、動かない場合は再度水の中に放り込んでやります。
デカールを水に浮かべている間に、デカールを貼り付ける場所に「マークセッター」を塗っておきます。
マークセッターはデカールをしっかり貼り付けるための糊で、デカール側の粘着力が弱い場合でもこれを使えば問題なく貼り付けることができます。
特にデカールを水に長く浮かべていると接着力が落ちるので、それを補うためのアイテムといえます。もちろん無くてもデカールは貼れますが、私は念のためマークセッターを使ってます。
水揚げしたデカール(軽く水切りした)を貼り付ける位置に持っていき、台紙から剥離してピンセットなどで優しく動かしながら位置決めをします。
デカールは薄っぺらいフィルムのようなものなので、力の入れ方をミスると破れます。爆発物を取り扱うように慎重に動かしていきます。
位置が決まったら綿棒で上からトントンと優しく抑えて水分を取り除きデカールをより模型に定着させます。
昔のプラモデルのデカールを使ったことがないのでよくわかりませんが、最近のプラモデルのデカールは気泡が出来にくいようになっているのか、すごく貼り付けやすいです。
ただ、それでもデカールの透明部分がテカテカしていかにも”貼りつけた感”が出る「シルバリング」が発生する場合もあるので、デカールはしっかり密着させましょう。特に透明部分の面積が多いもの(数字や文字が描かれたもの)は注意。
私は今のところシルバリング現象に遭遇したことがない(多分)のでやってませんが、シルバリング対策としてタミヤのアクリル塗料「XF86 フラットクリヤー」をデカールを貼る周囲に塗る方法もあります。
ということで、まずは装甲板3枚に国籍マークを貼り付けました。
同じ要領で他の場所にもデカールを貼り付けていきます。上の写真はFlak41のメーターのデカールを貼り付けたところ。メーターは3つありデカールの種類も違うので間違えないようにします。
モールドに合わせてデカールを貼り付けるので位置決めは比較的やりやすい………と思いきや、よりによってメーターの位置が防盾のすぐ近くなので貼りづらいことこの上なし。
続いてこちらはフェンダー左側に貼り付けた戦術マーク。おそらく高射砲や対空機関砲といった対空兵器の運用を意味するマークだと思います。
ちなみに似たような戦術マークは、過去に作った「メーベルワーゲン(2cm Flakvierling38 搭載型)」でもありました。説明書では「20mm 4連装対空自走砲」と記載。
上の写真を見ると「♂」の横にチョンチョンと点が4つ付いています。これが4連装を意味するものだと思います。
一方でフラックワーゲンは単装なのでマークを見ると点がついていません。
2cmのFlak38ならともかく、キングタイガーに匹敵するバケモノ火力のFlak41は1つでも脅威です。それが連装なんてありえない。どうせフィクションか何かですよははは。
ひとまず、これで貼るべきデカールはすべて貼り終えました。ああつかれた。
みんな大好きウェザリング
お待たせしました。戦車模型の醍醐味である”汚し”こと「ウェザリング」のお時間です。
ウェザリングのやり方についても過去作で何度も解説しており、そろそろマンネリ化してきているので、ここは一つ、新しいアイテムを使ってやってみることにしました。
ということで、ウェザリングの内容としては
- ウォッシング
- スミ入れ
- ドライブラシ
- 砂・泥汚れの再現
- サビの再現
といった内容です。………あれ? いつもと同じ???
ウォッシング
まずは全体に泥水のような色の塗料を塗って彩度を落とす「ウォッシング」を行います。
塗料はタミヤのエナメル塗料「XF-64 レッドブラウン」と「XF-1 フラットブラック」を混ぜて汚い泥水っぽい色を作り、溶剤を多めに入れて10倍ほどに希釈しました。
そいつを車体の全域にまんべんなく、薄く伸ばしながら塗っていきます。
ただ、注意したいのはエナメル溶剤はパーツを溶かすと言われています。パーツが割れるという惨状こそ無いものの、接着したパーツが取れてしまうことは何度も経験しています。
特に今回のフラックワーゲンは細かいパーツのバーゲンセールなので、「ウォッシング」の名の通り被るように塗ったらパーツが取れまくってどえらい事になります。
なのでジャバジャバ塗るのではなく、薄く伸ばすように塗りました。
装甲板の内側。右半分のみウォッシングした状態。
一通りウォッシングしたら、今度はエナメル溶剤を含ませた綿棒やティッシュなどで、表面のエナメル塗料を拭き取ります。
例えるなら汚れまくった車体を洗剤使ってゴシゴシするような感じです。
装甲板などは上から下へ流れるように拭き取ることで「雨だれ」も再現できます。
スミ入れ
続いて、各モールドの根元部分を暗くする「スミ入れ」を行っていきます。
このスミ入れとその次に行う「ドライブラシ」によって表面と根本の明暗差がクッキリ出てモールドをより立体的に魅せてくれます。
また、突起だけでなく窪み(特にパネルライン)に流し込むことでパーツの境界線を明確にしてくれる効果もあります。
使用する塗料は同じくタミヤのエナメル塗料。「XF-10フラットブラウン」と「XF-1 フラットブラック」を混ぜます。
こちらもエナメル溶剤で薄めますが、ウォッシングよりは濃い目にしておきます。
塗料はパーツの根本など影ができそうな場所にチョンチョンと点付けします。これでパーツの根本が暗くなるので、その次の「ドライブラシ」でモールドの表面を明るくします。
スミ入れとドライブラシのコンボでモールドの立体感がより強調されるので、迷彩塗装の車体はもちろん、単色の戦車では特に有効な技法だといえます。
なお、暗くするのはモールドの根本なので、ハミ出た場合はエナメル溶剤で拭き取ります。
ドライブラシ
先ほどご紹介にあがりました「ドライブラシ」でございます。
ドライブラシとはその名の通り、乾燥した筆(塗料)を対象物に塗りつけて、わずかな色の変化をつけるもので、パーツの表面だけを明るくしたり、金属の質感を再現するために用いられる技法です。
今まではパーツの突起部分やエッジを明るくして立体感を出すためだけにドライブラシを行っていましたが、今回は更に履帯の摩耗表現もドライブラシでやってみようと思います。
車体のドライブラシ
まずは車体からドライブラシをします。使用する塗料はエナメル塗料の「XF-59 デザートイエロー」。
溶剤を使わずにダイレクトに筆に取り、それをティッシュで拭き取って乾いた状態にし、筆に残った僅かな塗料をモールドやエッジ部分に擦りつけてうっすらと色を乗せていきます。
塗るというよりはホウキでサッサッと掃くような感じで、同じ場所を5回ほどブラシしてうっすらと色が変わるくらいが適量です。1発で色が乗るのは拭き取りが足りません。
また、筆は通常のものでも大丈夫ですが、毛が硬くてコシのあるものを使うとやりやすいです。
ドライブラシをすることで、モールドの表面だけが明るくなりました。
上の写真のように、根本が暗く表面が明るくなることで「突起」の質感が出てより立体的になったのがわかるかと思います。
また、デザートイエロー単色に加え、デザートイエローに「XF-60 ダークイエロー」を混ぜて明るくしたものを段階的に使っていきます。
ドライブラシはエッジ部分を中心に行いますが、それ以外の平面などにもブラシをすることで、砂埃を被ったような質感も再現できます。
私はウォッシングで暗くしすぎる悪いクセがあるので、砂埃の表現に加え、暗くなりすぎた車体の色を明るくするためにドライブラシをやってます。
さて、ここまでの作業で車体に搭載した8.8cm Flak41の工程が全て完了したので、3枚の装甲板を組み上げます。
嗚呼このフォルム。いかにも「自走砲!」って感じです(しんみり)。何というか、自走砲って良いですよね。自走砲の形好きです。
履帯のドライブラシ
次は履帯にもドライブラシを行います。
車体も履帯もドライブラシの方法は同じですが、車体などのドライブラシは突起部分を明るくすることが目的なのに対し、履帯のドライブラシは摩擦による金属の地肌の露出を再現することが目的です。
使用するのはタミヤペイントマーカーの「X-11 クロームシルバー」。
車体のときと同じように、塗料を筆に取ったらティッシュで拭い取り、わずかな塗料が乗った筆でカサカサとエッジ部分を中心にドライブラシします。
- 履帯の接地面
- ピンの頭
- センターガイドの先端
- 履帯内側の転輪が触れる場所
といった場所を中心に行いました。
その他、車体に取り付けられたOVM(鉄の部分)や車載機銃にもこのドライブラシは有効なので、実際にジャッキや牽引シャックル、スコップなどにやってみました。
ただ車体の時と違い、こちらは色がシルバーなのでやりすぎると履帯がギラギラしてプラスチックの玩具みたいな質感になります。うっすらと色が変わる程度に留めましょう。
センターガイドの先端にも同じようにエアブラシ。
履帯内側の転輪が触れる場所にも大雑把にドライブラシします。
砂・泥汚れの再現
戦車の醍醐味であるウェザリングの中でも特に醍醐味なのが、履帯やその周辺の泥や砂といった汚れの再現です。
戦車は道路だけでなく、草原や泥濘、ありとあらゆる場所を道としてゴリ押しするので、バイクモデルやカーモデルなどにはない汚れが足回りにたくさん付着するのです。
今までは砂や泥の汚れは100円均で買ったパステルを使って行っていましたが、今回はちょっと手法を変えて「Mr.ウェザリングペースト」というものを使ってみました。
使用したのは
- マッドブラウン
- マッドホワイト
- Mr.ウェザリングカラー専用薄め液
まずマッドブラウンで付着したばかりの湿った泥を再現し、その上にマットホワイトを重ねて泥が乾燥した質感を出します。
ウェザリングペーストは単体では上の写真のような固形物になっています。
バターのような硬さ(粘度)なので、単体で使うのはなかなか厳しいです。うすめ液を一緒に買っておいてよかった…。
まずはパレットなどにマッドブラウンを撹拌スティック1杯分置いて、うすめ液で希釈しながら車体の下の方に塗っていきます。
筆で叩くようにピタピタと塗っていくのもアリですが、過去に見たプラモ動画でやっていたテクニックを参考に、硬めの筆を指で弾いてウェザリングペーストの飛沫を付着させます。
すると上の写真のように泥が飛び散った感あふれる車体下部になりました。
さすがプロモデラーのテクニックだけあります。素人の私ですらこれほどの質感を再現することが出来たのですからね。こんなにもリアリティ溢れる汚しは初めてですよ。
またよーく見てみると、汚れが立体的になっているのがわかります。ウェザリングペーストは塗料と違って立体的な汚しを再現してるようです。
ただ、この筆を指で弾く作戦はかなり広範囲に飛沫を飛ばしてくれるので、「そんなところは汚れんだろ」という場所まで殺傷範囲となる点に注意。
そういう場合は薄め液を含めたティッシュなどで拭き取れば大丈夫ですが、プラモデルだけでなくキーボードやディスプレイまでウェザリングしてしまったので掃除が大変でした。
なので転輪は従来通りピタピタとウェザリングペーストを乗っけていきます。
同時に車体の奥まった場所も忘れず汚しておきます。
マッドブラウン監督が乾いたらマットホワイトを重ねていきます。
同じように履帯も汚します。
マッドブラウン、マットホワイトの順番で、薄めに溶いたウェザリングペーストを筆でペタペタとランダムに塗ります。
ウェザリングペースト自体が「立体的」な汚れを出すのに適した塗料なので、つけ過ぎると熱盛っ! となるので、まずは薄めに溶いたやつで様子を見て、足りないならば追加していきます。
プラモ始めた最初の頃は沼にでも沈めたかのように泥を厚盛りしていましたが、上の写真くらいが丁度いい気がします。
ウェザリングペーストを使うのは今回が初めてなので勝手がわかりません。なので車体の裏側に適当にペタペタと塗って遊んでみました。
薄め加減・塗り加減でコテコテの厚盛りから、軽く汚れた程度まで幅広い土・泥汚れが気軽に再現できるので、ウェザリングペーストはなかなか便利なアイテムです。
100円均のパステルと比べると若干割高に見えますが、
- 出したい色が手軽に出せる
- 立体的な汚れを再現できる
- 1本で戦車10台分は使える
という点を見るとパステルよりもコスパは良いんじゃないかと思いました。特に初心者の私ですらこれほど上質な泥汚れを再現できるので、初心者には心強いウェザリングアイテムといえるでしょう。
サビの再現
最後は排気管やOVMなど「鉄」に薄っすらとサビを浮かせてみます。こちらも今まではパステルを使っていましたが、今回はMr. ウェザリングカラーのラストオレンジ を試しに使ってみます。
先ほど使ったウェザリングペーストと違い、こちらは液状のもので各種カラーを使いこなすことで、ピグメント(粉末の顔料)が無くても(部分的な)ウォッシングやスミ入れ、砂埃やサビといった各種ウェザリングが出来ます。
そんな中でこの「ラストオレンジ」はその名の通り、サビ色を再現するのに適したウェザリングカラーです。
ラストオレンジを面相筆で部分的にペタペタと塗ると上の写真のようになりました。
ちょっと色味が足りないかなー? と思いますが、排気管は細いのでサビを大きくしすぎるとスケール感を損ねてしまいそうなので深追いはやめておきます。
ちなみに、ウェザリングカラーを駆使することで排気管の下地からサビまで再現することができるようです。
- 排気管に「グランドブラウン」をべったり塗る
- 半乾きの状態で「ステインブラウン」をランダムで塗る
- これらをうすめ液を含ませた筆で軽く混ぜる
- 「ラストオレンジ」を点付けする
- 周辺をうすめ液を含ませた筆でボカして馴染ませる
参考 吉岡和哉さん(@hareiwa1173)のウェザリングカラー使い方解説
まとめ フラックワーゲン完成!!
やっと終わった!!
フラックワーゲンは4月に製作をスタートして12月までかかったシロモノだけに「ああ…やっと終わったわ」という気分です(苦笑)
とにかくパーツ数が多く、その中でもエッチングパーツや細い・小さい・脆い三拍子そろったパーツといった鬼のような構成で、組み立てはひたすらHPを削られてました。
また、完成してからも狙ったように週末に雨が降ってくれたおかげで延期に次ぐ延期で車体塗装が終わるのに2ヶ月もかかるという具合に、とにかく遅れまくりでした。史実なら終戦迎えるレベル。
でも、それだけに細かい部分まで再現されており、またエッチングパーツの扱いもだいぶ慣れてきたし、じっくり組み立てを楽しむことが出来ました。
それでは完成したフラックワーゲンを見ていきましょう!
フラックワーゲンのギャラリー
左側面。
このフラックワーゲンは「走行時」のフォルムで装甲板を立てた状態となり、砲を左右に動かすことは出来ませんが、砲身を上下に動かすことは可能なので、適度に角度をつけて楽しんでます。
上の写真のように45度くらいにすると敵陣地を砲撃する「自走榴弾砲」っぽくなります。
しかし残念ながら自走榴弾砲なら「グリレ」とか「ヴェスペ」とか「フンメル」があるので、フラックワーゲン(Pz.Sfl.IVc)はいらない子…。
左側から撮影。
今度は砲身を水平にしてみました。8.8cm Flak41は高射砲としてだけでなく、対戦車砲としても優れた力を発揮します。連合軍の主力戦車もこのFlak41にかかればフライパンも同然です。
しかし、対戦車自走砲は同等の砲である8.8cm PaK43を搭載した「ナースホルン」がいますし、対戦車戦闘は駆逐戦車に頑張ってもらいます。ここでも彼の出番はありません…。
ならば砲身を大空に向けて航空機を狙えば良いのです。
何を隠そう8.8cm Flak41は高射砲です。その優れた仰角と有効射程で連合軍の爆撃機をハエのごとく叩き落とします。
対空戦車はメーベルワーゲンやヴィルベルヴィント、オストヴィント、後にクーゲルブリッツといったものが開発されましたが、彼らはせいぜい高度4,000mが限界です。
しかし8.8cmなら最大射程9,900m(有効射程:8,000m)なので、高高度を飛行する爆撃機だって怖くないもん。
そんなFlak41の正面には大きな防盾がついています。防盾の防御力は非常に高く、T-34やM4といった連合軍の主力戦車の車載機銃だって耐えられます
こちらは戦闘室。巨大な高射砲である8.8cm Flak41が大部分を占めていて非常に狭そうです。
戦闘時は装甲板を展開するので広くなりますが、WoTのPz.Sfl.IVcはこの状態で戦うので中に乗ってる兵士が閉所恐怖症にならないか心配です。
車体後部。
フラックワーゲンを作った先人モデラーさんの作品の中には、後部装甲板だけ展開するものもありました。
確かに狭っ苦しいので後ろだけでも開けて開放的にしたいですし、砲弾の搬送を考えると実に合理的だと思います。
フラックワーゲンとメーベルワーゲン
せっかくなので同じ対空自走砲(対空戦車)であり、同じ”ワーゲン”がつく「メーベルワーゲン」も並べてみました。
よくよく考えると先に作ったメーベルワーゲンは対空射撃、水平射撃のフォルムなので、フラックワーゲンで走行時のフォルムを選んだことで、3つのフォルムが揃ったことになります。やったね。
真上から見てみるとこんな感じ。
フラックワーゲン(Pz.Sfl.IVc)は4号戦車のパーツを利用しているとのことですが、4号戦車の面影はほとんどなく、車体も若干ながら4号戦車よりも長くなっています。
横から撮影。
3枚の装甲板が特徴なフラックワーゲンですが、装甲板だけでなく8.8cm Flak41の大きさもまた注目すべき要素です。ものすごく大きくてメーベルワーゲンの対空機関砲がつまようじに見えるレベル。
実際は低空を飛来する戦闘機はメーベルワーゲンのような対空機関砲、そして高高度を飛来する爆撃機はフラックワーゲンのような高射砲がそれぞれ担当していました。
おわりに
というわけで半年以上かかったフラックワーゲンも無事に完成しました。
エッチングパーツや極小パーツ、可動式履帯などなど、モデラーのHPをガリガリ削る要素が満載で、ドラゴンの戦車プラモデル以上に手強いやつでした。もう当分作りたくない(笑)
それでも可動式履帯が生み出す足回りのディテールや8.8cm Flak41の完成度は苦労に見合うものです。ある程度模型を手がけて物足りなさを感じたら挑戦してみると良いかもしれません。
↑次回は「超重戦車」に「8.8cm Flak」を2門搭載したという夢のような対空戦車を作ります。