年末年始にプラモ県こと静岡に旅行に行き、そこでホビーショップを見つけて立ち寄り、人生初のプラモデルを購入しました。
購入したのは『ドイツIV号対空戦車 ヴィルベルヴィント』という、戦車(対空戦車)のプラモデルです。メーカーはタミヤです。
本格的なプラモデルを作るのは初ですが、このIV号対空戦車 ヴィルベルヴィント(以下:ヴィルベルヴィント)という戦車(対空戦車)はゲームで見たことがあります。
なので「ヴィルベルヴィントはこういうやつですよ」と、ざっくり紹介できる程度に知ってるヤツです。
ということでこの記事では
- タミヤのプラモデル「ドイツ IV号対空戦車 ヴィルベルヴィント」のレビュー
- ドイツの対空戦車「4号戦車 ヴィルベルヴィント」の解説
についてまとめました。
タミヤのプラモデル「ドイツ IV号対空戦車 ヴィルベルヴィント」をレビュー
ではまず購入したタミヤのプラモデル「ドイツ陸軍 IV号対空戦車 ヴィルベルヴィント」についてご紹介します。
冒頭でも述べた通り、戦車プラモはおろかプラモデルそのものが初めてですが、箱絵を見ただけで「あ、これ初心者向けじゃないな」ってのがわかります。だが負ける訳にはいかない…!
ヴィルベルヴィントを選んだ理由
第二次世界大戦中のドイツ戦車といえば「ティーガー」とか「パンター」、そしてヴィルベルヴィントの母体である「4号戦車」などが有名です。
それらメジャーな戦車を差し置いて、何故このヴィルベルヴィントのプラモデルを選んだかというと、対空戦車が好きという理由から。
個人的にヴィルベルヴィント(およびメーベルワーゲン)の後継種である、「オストヴィント」が欲しかったけど、お店に無かったのでコレにしました。
「バトルフィールド1942」のデモ版でヴィルベルヴィントの存在を知る
「ヴィルベルヴィント」の存在を知ったのは、PCゲーム「バトルフィールド1942(以下:BF1942)」のデモ版をプレイしていた時でした。
戦車のようにな車体に、(戦車にしては)なんだか奇妙な形の砲塔、(戦車にしては)ものすごく細い砲身が4つ。「これ本当に戦車なの?!」ってなるユニークなデザインに惹かれました。
また、ズンズンと重く響く砲撃音に「漢や………」と惚れ惚れ。気付いたらヴィルベルヴィントの虜になっていたのです。
当初はこれが「対空戦車」だと知らずに乗り、いくら砲弾をぶつけても敵の戦車を撃破できず返り討ちにされまくってました。
箱を開けて中身を確認
ということで、初めてのプラモデルの箱を開けて中身を確認していきます。
以下、個人的に気になったものをまとめてみました。
パーツランナー
まずはランナー(パーツがくっついてる枠)が入った袋が5つ。
プラモデルの大きさは作る模型のタイプ(戦車、航空機、軍艦、バイク、その他)やメーカーによって様々なサイズ(スケール)があります。
戦車や装甲車などのAFVモデルはスケール別に1/16、1/35、1/48、1/72…と色々ありますが、今回のキットは1/48となります。
サイズが大きくなるほどパーツ数も増え、細かい特徴も忠実に再現され、より組み立て甲斐が出ます。でもプラモ初心者の私には、1/48でも多く感じますけどね(笑)
一方1/48のような小さいものだと置き場所に困らない他、1/48はジオラマやヴィネットといった情景作品を作るのに適したサイズでもあります。
組み立て説明書
こちらは説明書。組み立て手順はもちろん、どこに何色を塗るのか、デカールはどこに何を貼るのかといったことも書いてありました。
説明書によると、このヴィルベルヴィントは1945年2月にフランスに投入されたものを再現しているそうです(部隊は不明)。
また説明書には「ツィンメリットコーティング」についての記載もありまして、何それ? と思ってググったら、歩兵が使う「吸着地雷」が車両に引っ付かないようにするためのコーティング加工とのこと。ほうほう。
ドイツ軍が開発した磁石で吸着させる対戦車地雷を、「敵もパクって使うかもしれんから対策しとこ」ってことで、1943年8月に制式化された車体への加工です。
ところが、敵が吸着地雷を使わなかったり、コーティングに時間が掛かるとか、重量が増すといった理由で1944年9月に廃止されたそうです。
そんな「ツィンメリッ・トコーティング」なんですが、リアル戦車でもなかなか手間がかかるので、プラモデルにおける加工でも「まさに鬼門」とのこと。模型愛好家たちの間で様々な方法が試されました。
スライドマーク(デカール)
こちらは車体に貼るスライドマーク(デカール)。
砲塔の両側面および車体後部に貼る国籍マークの鉄十字が3つと、砲塔番号「031」および「032」がそれぞれ2つずつありました。
残念ながら「031」あるいは「032」の砲塔番号がついたヴィルベルヴィントの写真は見つかりませんでしたが、先述の通り1945年2月にフランス(アルザス・ロレーヌ)で発見された車両をモデルにしているようです。
「パイパー戦闘団」のヴィルベルヴィントを再現する場合
なお、ヴィルベルヴィントが活躍した逸話としては、ヨアヒム・パイパーSS中佐が率いる「パイパー戦闘団」に随伴した車輌があります。
ドイツ軍最後の反撃ともいわれる「バルジの戦い」において、1944年12月18日に山道を進行中していたパイパー戦闘団の車列に16機のP-47サンダーボルトが襲撃します。
このP-47は30分にわたる攻撃を行いましたが、パイパー戦闘団に決定的な損害を与えることはできず、逆にヴィルベルヴィントによってP-47が1機撃墜されました。
パイパー戦闘団のヴィルベルヴィントは、対空戦車としての任務を果たしたのです。
そんなパイパー戦闘団付随のヴィルベルヴィントを再現する場合は、国籍マークのデカールのみ貼ります。
車体シャーシはダイカスト製
こちらは車体下部のパーツ。ここに転輪や履帯などを取り付けます。
「プラモデル」なので通常のパーツの材質はプラスチックですが、1/48スケールの戦車プラモの車体シャーシはダイカスト製(一部を除く)なので、ズッシリと重量感があります。
ただ、プラモ用接着剤で接着するプラスチックのパーツと違って、こういった金属のパーツは瞬間接着剤が必要です。
車体の塗装について
箱の側面には車体の塗装の際に使用する塗料の色が記載されていました。
ダークイエローをベースに、レッドブラウンやダークグリーンを使って迷彩塗装をするとのこと。
実際のドイツの戦車は、第二次世界大戦の初期は迷彩塗装ではなくグレー(ジャーマングレー)の塗装をしていました。
ところが戦況が悪化して、攻めから守りの戦いとなり、隠れる(発見を遅らせる)必要性が出たため、車体色をダークイエローに変更したり迷彩を施すようになりました。
最初は兵士たちが支給された塗料を使って各々迷彩塗装を施しましたが、後に工場であらかじめ迷彩塗装をするように通達がされたとのことです。
ちなみにこの時点で私が所持している塗料(スプレー)はこちら。
右からブラック、ライトサンド、ダークグリーン、艦底色。明らかにドイツ戦車を塗装するための色ではない(ダークグリーンを除く)
もともとはエアガンを迷彩塗装するために買ったものなので、プラモデルでこれを使えとなると車体全体の基本塗装くらいでしょうね。スプレー塗料なので細かいコントロールは苦手なのです。
一緒に買った工具類
静岡のホビーショップで買った「ヴィルベルヴィント」ですが、無謀にもホテルの部屋で組み立てようと考えてたので、最低限のツールはあった方が良いと思って合わせて購入したニッパーと接着剤。
「これだけじゃ無理だろ」というくらい本当に最低限度です。…組み立てられないことはないですが、パーツのバリ取が出来ないので確実に完成時のクオリティが下がります。
知識・工具ナシで組み立てるのは無謀(笑)
本来はホテルでノンビリ組み立てようと思って買ったものですが、プラモなんて作ったことがない私にとって無謀すぎる選択でした。
それはもう、箱開けて即座に「あ、これ無理だわ」ってなるほどに。
なので、ホテルでの組み立ては諦めて、家に帰ってから工具と情報を揃えてじっくり作ろうという結論に至った次第です。
………と言う具合にタミヤのプラモデルの方のヴィルベルヴィントのレビュー(キットの紹介)をしてみました。
せっかくですから、実物の「ヴィルベルヴィント」とは何かについても書き綴ってみます。
「4号対空戦車 ヴィルベルヴィント」とは
プラモデルのヴィルベルヴィントに続いて、今度はドイツの対空戦車『4号対空戦車 ヴィルベルヴィント』がどのような戦車(対空戦車)なのか、についてご説明します。
ヴィルベルヴィントは「4号戦車」をベースにした対空戦車
ヴィルベルヴィントは「4号対空戦車」の名の通り、第二次大戦中のドイツにおいて最も大量に生産された戦車である「4号戦車」の車体を流用して作られた対空戦車です。
レストアや修理などで戦場から戻った4号戦車の砲塔を撤去し、そこに乗員を保護する装甲と対空機関砲を備えた砲塔を乗せるだけで出来るお手軽なものでした。
ヴィルベルヴィントは以前からあった対空車両(特にメーベルワーゲン)の不足を補うための暫定的なもので、以降の対空戦車が完成するまでの数合わせといった側面もありました。
新しく対空戦車を作るより、既存の戦車を流用して砲塔だけ新規とすれば時間もコストも削減できますからね。
魔の4連装と恐れられた「2cm Flakvierling38」を搭載
ヴィルベルヴィントは20×138mmB弾を発射する対空機関砲「2cm Flak38」を4連装にした「2cm Flakvierling38」を搭載しています。
まともに食らえばミンチ不可避な弾を放つ対空機関砲が4つになり、毎分720発(理論上は1,800発)になったといえばその恐ろしさが伝わるかと思います。
そんな4門の20ミリ機関砲による驚異的な射撃によって、2cm Flakvierling38は連合軍から「魔の4連装」と恐れられていました。
映画「プライベート・ライアン」では終盤に単装型の「2cm Flak38」が登場し、戦車に肉薄攻撃する米軍兵士をバタバタと薙ぎ払うシーンがあります。
「2cm Flak38」および発展型の「2cm Flakvierling38」は対空戦闘を想定した対空機関砲ですが、優れた連射能力や射程距離から、兵士や非装甲の柔目標を対象とした「水平射撃」をすることもあったようです。
しかし、第二次大戦も後半になるにつれて2cm Flakvierling38では威力不足となりました。連合軍の航空機も発達し、高高度を飛行したり、機体が装甲化されたためです。
この威力不足を重大視したドイツ軍は、2cm対空機関砲よりも更に大口径である3.7cm、5.5cmの対空機関砲を開発し、2cm Flakや8.8cm高射砲と並行して使用しました。
このうち、3.7cm対空機関砲 Flak43を搭載した対空戦車として「4号対空戦車 オストヴィント」が開発されます。
また、最初の4号対空戦車である「メーベルワーゲン」も対空機関砲を2cmから3.7cmに強化したことを鑑みるに、2cm対空機関砲の威力不足は深刻だったといえます。
ヴィルベルヴィントは、対空戦車の生産をメーベルワーゲンからオストヴィントに移行するまでの対空戦車不足を補うための暫定車輌(戦場から戻ってきたIV号車体に専用砲塔を乗せ換えるだけなので比較的すぐ作れる)でした。
おそらくオストヴィントもヴィルベルヴィントと同様の運用をイメージしていたのでしょうが、3.7cm対空機関砲を収めるためには砲塔を大きくしなければならず、ヴィルベルヴィントのようにはいかなかったようです。
対空戦車とは? 開発経緯と役割
ヴィルベルヴィントを含め、装甲戦闘車両のカテゴリの1つである「対空戦車」とはどういう戦車なのか、という点についても説明します。
対空戦車とは読んで字のごとく、対空(戦闘をする)戦車です。対空戦闘つまり航空機を相手に戦う戦車です。
第2次世界大戦末期、防戦一方となったドイツ軍は連合軍の航空機への対策が課題となります。そのため、高射砲や対空機関砲といった地上から敵機を迎撃する「対空砲」が開発されます。
しかし対空兵器のような拠点に設置するタイプの兵器(対戦車砲・榴弾砲など)は一度設置すると移動に時間がかかるという欠点があります。
対空戦車とは戦車の車体に対空兵器を乗せたもの
もちろん大砲は装甲車などで運ぶための牽引装置はありますが、単体での自走能力はなく、移動は限定的。航空機は戦車を狙って攻撃するし、戦車も積極的に移動します。
作戦行動中の味方を敵の航空機から守るためには、「機動力」が必要でした。
そういった理由から、高射砲や対空機関砲など対空兵器をハーフトラックや戦車の車台に搭載した自走式対空砲(対空自走砲)が開発されるようになります。
この自走式対空砲のうち、「戦車」をベースにしたものが「対空戦車」です。
対空戦車の目的
対空戦車の目的は、戦車部隊に随伴して敵機から味方の車輌を守ることです。
「対空戦車」という名前から「敵機を撃墜する」が目的とカン違いしそうですが、本当の目的は味方を守ることで、その結果で生じるのが敵機の撃破ということです。
敵機が接近してきたら戦闘態勢に入り、爆撃や機銃掃射しようとする敵を妨害します。もちろん撃墜できれば御の字ですが、そうでなくても敵機の攻撃を妨害出来れば大戦果でした。
そういった対空車両(対空戦車)のひとつがこの「ヴィルベルヴィント」なのです。
次回から製作に入ります
何というか、プラモデルを買ったというよりも、ヴィルベルヴィントを買ったと言った方が良いのかもしれません。
初心者でも簡単に作れるプラモデル(ガンプラとか)もあるので、そっちを選べばホテルでも作れたかもですが、陳列されたプラモの中にヴィルベルヴィントがあったので買ったのです。
まぁでも、買ったからには作ります。記念すべき最初のプラモを「積みプラ」にするなんてことはしません。道具や知識を集めながらチビチビと組み立てていこうと思います。お楽しみに。
↑次回からヴィルベルヴィントを製作していきます。…が、早くも悪戦苦闘しております。