ブラック企業による若者の使い潰しが後を絶たない昨今ですが、求人票の内容がまったくのデタラメで、長時間の残業をさせるなど過酷な労働をさせている会社があるそうです。
「求人票」は求職者が会社と雇用契約を結ぶ上で判断をするものであり、そこに虚偽記載をするのは企業としてどうなんでしょうか。やってること詐欺なのではと思うくらいです。
ニュース記事
求人票に虚偽記載 20代男性が死亡
徹夜で約21時間の連続勤務をしたあと、自宅にバイクで帰る途中に交通事故死した20代男性の遺族が、男性の勤務していた会社を刑事告訴した。
警視庁に告訴した理由は、実際の過酷な勤務実態とは違う内容の「求人票」をハローワークに出していたことが、職業安定法に違反するというものだ。
via : ハローワーク「求人票を信じた息子は戻ってこない」 遺族が「虚偽記載」で勤務先を告訴 – ニコニコニュース
求人票の残業は「月平均20時間」 実際は「月134時間」
勤務は深夜・早朝に及び、残業時間は月130時間を超えるときもあるなど、過酷な労働環境だったという。
悲惨な交通事故が起きたのは、2014年4月。航太さんは、顧客店舗の飾り付けのため、4月23日の午前11時から翌24日の午前8時まで、約21時間にわたって、仮眠も取らずに働いた。
その後、原付バイクで自宅に帰ろうとしたが、午前9時ごろ、帰宅途中の道路の電柱に衝突し、脳挫傷と外傷性くも膜下出血で死亡した。
via : ハローワーク「求人票を信じた息子は戻ってこない」 遺族が「虚偽記載」で勤務先を告訴 – ニコニコニュース
求人偽装、パワハラ、長時間労働 そして社員が死亡
こういう企業はだいたい雇用条件が劣悪なので、事実を書いたら求職者は現れないと思います。来たとしても学歴・職歴が真っ白な高齢ニートとか前科があるような人くらいでしょうか。
で、企業もそれを理解しているのであれば、雇用条件を改善すればいいものを、そういった努力をせずに、「偽装」をして求職者を騙すんですよね。
人を欺いて利益などを得る行為を「詐欺」と呼びますが、こういう求人票の内容を偽って求職者を得ようとする行為も詐欺と呼ばないにしても詐欺に匹敵する悪質な行為です。
人を欺く会社のサービスは受けたくない。
雇用条件が劣悪だけど、人手不足解消したいから求人募集するってのはどこの企業にもありますが、その雇用条件現状を改善するのではなく、人を騙すってところがもうブラック通り越して「違法企業」ですよね。
死人を出しているので殺人企業と呼んでもいいレベルです。
会社名は「株式会社グリーンディスプレイ」
話によると、偽りの求人を出し、若者を死なせた会社というのが、株式会社グリーンディスプレイという東京都世田谷区に本社を置くホテルや百貨店に植物を装飾する会社だそうです。
装飾するから偽装もありなんて冗談はいらない。
……ニュースを見て「どんな会社かなぁ」って亡くなった方の名前で検索してパッと出てきたのですが、株式会社グリーンディスプレイ……聞いたことがあるんですよね。
ひょっとしたら過去の記事でも出したかもしれません。
植物の装飾に関する会社だけにHPを見てみるとやたらオシャレですが、実態は求人票偽って騙して酷使し、死人を出して裁判沙汰というドス黒い企業なんですね。
なお、このニュースは2016年1月23日ですが、HPにその件についての記載は見当たりませんでした。シラを切るつもりでしょうかね。
被害者が死亡したのが2014年の4月とのことですが、一番古いニュースが2014年9月で、いずれにせよ記載は「見当たりません」。
株式会社グリーンディスプレイと入力すると
試しにグーグルで会社名を検索してみると「過労」だの「ブラック」だの案の定ネガティブな検索候補が表示されます。
求人票を偽って人を騙し酷使させ、過労による死亡事故を起こさせたから散々な評価なのは自業自得。コンプライアンスを軽視した結果です。
求人票の虚偽記載だけでなく、株式会社グリーンディスプレイは亡くなった男性社員に対して「手足がもげるまで働け」とパワハラも行っていたようです。典型的なブラック企業です。
虚偽条件での労働者募集は職業安定法に反します
ご遺族の方は株式会社グリーンディスプレイに対し、「職業安定法」に違反しているということで、刑事告訴を行いました。
第65条 次の各号のいずれかに該当する者は、これを6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
八 虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を呈示して、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者
via : 職業安定法 – houko.com
上記に引用したように、虚偽の広告や条件を呈示して労働者を募集する行為は職業安定法 第65条8号に反する行為です。
罰則には6ヶ月以下の懲役か、30万円以下の罰金とありますが、ニュース記事では遺族が1億651万円という損害賠償を請求しております。
単に職業安定法を違反しただけでなく、過労によって人を死亡させているので、賠償額は更に跳ね上がっているということです。遺族の要求通りに判決が下ればいいなと思います。
グリーンディスプレイのその後
商業施設の植物設営、装飾などを行う「グリーンディスプレイ」(東京都世田谷区)の従業員だった渡辺航太さん(当時24歳)が、バイクで帰宅中に事故死したのは過重労働が原因として、遺族が同社に約1億円の損害賠償を求めた訴訟は2月8日、横浜地裁川崎支部(橋本英史裁判長)で和解が成立した。
同社は責任を認めた上で謝罪し、11時間のインターバル規制や仮眠室設置、深夜タクシーチケット導入など7つの再発防止策を実施。遺族に解決金約7591万円を支払う。
via : 21時間勤務後に帰宅中の事故死、会社の責任認める…訴訟の和解成立、原告側「画期的」 – 弁護士ドットコム
その後、グリーンディスプレイと遺族との間で和解が成立し、グリーンディスプレイは遺族に7,591万円を支払うようです。
従業員70名、資本金1,000万円という企業規模であることを鑑みても、7,591万円は非常に大きい額となるのではないでしょうか。
また、神奈川労連によると、解決金を含め、下記のようなことが決定しました。
- 解決金を支払う(7591万5412円)
- 会社の過重労働に起因する本件事故にたいし謝罪する
- 再発防止策(勤怠管理の徹底など業務遂行計画の策定、11時間のインターバル導入と就業規則への明記と周知徹底、男女別仮眠室の設置、深夜タクシーチケットの導入、実施状況のHP等での公表等々)
- 和解内容の公表
謝罪、再発防止策、和解内容につきましては、2018年2月30日に株式会社グリーンディスプレイが声明を出しています。
関連 渡辺航太さん損害賠償責任訴訟についての当社見解と再発防止策 – 株式会社グリーンディスプレイ 代表取締役 浅利 彦治
しかし、声明を見ると、事故原因および過失相殺については異論があることを表明されています。詳細は声明文を確認してください。
まとめ:ブラック企業の欺瞞に騙されないで
こうやって求人票に実際と異なる雇用条件書いちゃう会社って山のようにあると思うんですよね。残念ながら。
「株式会社グリーンディスプレイ」も犠牲者が出て初めて表沙汰になった会社であり、氷山の一角なです。恐ろしいことに。
こういう欺瞞に引っかからないようにするためには、面接で人事に対して雇用条件をしっかり確認しておく必要があります。むしろ人事を面接するってくらいに。
もっと言うなら「雇用条件・労働条件を明記した書類」を貰ったほうがいいと思います。
言わずもがな雇用条件は会社と労働契約を結ぶ上で非常に重要な要素です。その条件だけで会社を選ぶと言っても過言ではないくらいのものですので。
もしもその雇用条件の話で人事がイヤそうな反応したら「あ、この会社地雷だわ」と思って辞退した方がいいと思います。劣悪な雇用条件だから渋るわけですが、それも労働基準法に反する行為です。
ブラック企業を撲滅するためには私たちがブラック企業の魔の手に引っかからないようにすることも大事です。