どうもこんにちは。
先日、タミヤのティーガーI(後期型)の制作が無事に終了し、ノルマンディーの戦場に走り去っていきました。
今度は「ヘッツァー」という、またまたドイツの駆逐戦車(戦車ではない)を作っていきます。
この記事はヘッツァー製作日記第一弾ということで、製作するヘッツァーのプラモデルと、実物ヘッツァーについて解説していきます。
ヘッツァー製作日記については、上記リンクから読むことができます。
ドラゴン 1/35スケール プラモデル「軽駆逐戦車 ヘッツァー」のレビュー
さて、まずは模型の方の「ヘッツァー」についてご紹介します。
今回作るヘッツァーは「ドラゴン」というメーカーのもので、以前作ったクーゲルブリッツをヤフオクで落札した時に一緒についてきたキットです。
そちらの記事にて、
なお、この落札した商品はクーゲルブリッツの他にもう2つキットがセットになったものです。そちらについては後ほど紹介しようと思います。
…と、ボヤいていましたが、その2つのキットのうちの1つがこのヘッツァーというわけです。
“後ほど”と書いておきながら、上記記事を投稿してから半年も経過してるので多分誰も覚えていないと思います。書いた本人ですら忘れてたのだから間違いない。
こちらがヘッツァーの箱絵。かわいいでしょ?
先述のクーゲルブリッツ同様に古いキットである上、ヤフオクで落とした中古品で、おまけにそのまま放置してた為に箱はあちこちボロボロ…。
こちらは箱の側面に描かれた完成図。今回のキットはコマンドバージョンということで、いわゆる「指揮車両」となります。
本来なら上の写真のような通信兵のフィギュアが2体(余剰パーツを使えば4.5体)付属するのですが、先述の通り、ヤフオクで落札した中古品のため、これら兵士のパーツは入ってませんでした。
私としてはフィギュアはあっても無くてもどちらでも良いというスタンス(むしろ無くて内心ホッとしている)なので、特に問題はありません。
ということで、開封して中身を見てみようと思います。
入ってたものを並べてみました。
- パーツランナー5袋
- 組み立て説明書
- エッチングパーツ
- デカール
- 塗装例
ドラゴンのキット(特にサイバーホビーブランド)は本来のパーツ+別のキットから流用したパーツという組み合わせで車両バリエーションを賄っている場合があり、ランナーの量がものすごいことになっている時があります。
…それに比べると今回のヘッツァーはランナーの量は極めて少なく感じます。
さて、話がそれましたが内容物を順番に見ていきましょう。
上下車体パーツ
パーツランナーはいくつかありますが、そのうち特に気になるパーツを見ていこうと思います。
まずこちらは上下車体のパーツがひっついているランナー。車体部分は大きいパーツで構成されているので良くも悪くも目立つ場所の1つです。
今回作るヘッツァーは厳密に言うと戦車ではなく「駆逐戦車」という車種です。
駆逐戦車は戦車のような旋回式の砲塔がい密閉型戦闘室となっており、照準を定めるためには車体ごと動かす必要があります。
戦車型に比べると不便ですが、その反面、
- 戦車型より車高を抑えることができて隠れやすい
- 戦車型よりも強力な主砲を搭載することが出来る
- 戦車型よりも軽い
- 戦車型より安価
などなどメリットも多く、第二次世界大戦後半の劣勢に立たされたドイツ軍にとって、駆逐戦車は防衛戦の要となる車輌でした。
そんな駆逐戦車であるヘッツアーは、今回のキットでは車体上部はワンピース構造になっています。
実際は複数の装甲板を溶接して密閉型の戦闘室となるわけですが、プラモデルの場合、駆逐戦車は1つの大きなパーツで戦闘室を再現している場合が多く、工程数が大幅に省略されています。
なお、装甲板の継ぎ目には溶接跡や切断跡もありますが、キレイすぎて逆に不自然なので少し汚くしたほうが良いかもしれません。
こちらは車体の下部。ここに転輪や履帯とかパネルなどを色々取り付けます。
ちなみにヘッツァーは4号戦車とかと同じようにリーフ式サスペンションで、転輪の数も少ないので、足回りの組み立ては割りと楽だったりします。
砲身は2分割タイプ
こちらは砲身のパーツ。なんかちょっと短く見えるのですが気のせい?
なお、戦車模型の「砲身」はキットによっては最初から”筒”になっているタイプもありますが、今回のヘッツァーの砲身は2分割されたタイプなので、また砲身の整形を楽しむことができます。
なお、ショップの説明には「アルミ砲身がセット」となっていましたが、中古なのかロットが違うのかわかりませんが、このヘッツァーには付属しませんでした。
ドラゴン(およびサイバーホビー)は金属砲身やマジックトラック(連結式履帯)、別商品のフィギュアなど、ボーナスパーツが後から追加される場合があるので、キットのフタを開けてそういったモノが入っていたらラッキー。
履帯は連結式
こちらは履帯パーツ。ランナーにパーツが取り付けられていて、1つ1つ切り離して接着する連結式履帯となっています。
ヘッツァーの転輪やフェンダー、シュルツェンなどの履帯周辺の形状を鑑みるに、履帯装着後の塗装は難しそうなので、今回は久々に「ロコ組み」をしようかなと考えています。
なお、押し出しピンの跡はセンターガイドの中央、つまり履帯の真ん中に1つありますが、幸い大半が転輪やフェンダーなどで隠れて見えなくなる場所にあるので、過剰に処理する必要はなさそうです。
履帯は右用と左用とで形状が異なるところまで再現されていました。
指揮車両特有の装備「スターアンテナ」
先述の通り、今回のヘッツァーは通常のタイプではなくコマンドバージョン(=指揮車両)です。
指揮車両は従来の無専用アンテナに加え、先端に放射状にアンテナがついている「スターアンテナ」がつきます。
スターアンテナは先端が逆さにした傘の骨のような形になっており、ただでさえ折れやすいアンテナがますます折れやすくなっています。
なので丁寧に扱うのは言うに及ばず、2回は確実にへし折るだろうという認識です。
デカールは鹵獲車両”CHWAT”のマークもある
続きましてデカールです。
いつものように国籍マークである黒十字と、102号車が2種類、S14号車が1つ、あとは見づらいですが「CHWAT」と記載されたデカールが一つ。頼むドラゴン! 車両番号の解説も付けてくれェ!!
調べてみると、CHWAT(フファット)というのは、ワルシャワ蜂起中の1944年の8月2日にポーランド側が鹵獲したヘッツァーの愛称で、ヘッツァーを回収したポーランドの下士官の名前から取っているとのこと。
なお、デカールはいずれも劣化が進んでいてなんか黄ばんでる…。古いもんね。仕方ないね。
ペリスコープガードやエンジングリルメッシュはエッチングパーツで再現
古いキットながらエッチングパーツも付属していました。
エンジングリルのメッシュ部分やペリスコープのガード、車載機銃の防盾に使用します。
本来なら付属のフィギュアに装着するヘッドホンのバンド部分もエッチングパーツで再現さえれていますが、こちらもフィギュアパーツと一緒に抜かれてました。
組み立て説明書
こちらは組み立て説明書。これを見ながら組み立てていきます。
バッと見た感じ、そこまでゴチャゴチャしておらず、比較的わかりやすい記載になっております。
いつぞやのオストヴィントの時は説明書の記載がゴチャゴチャで泣きそうになっただけに、今回は楽に組み立てられそうです。
なお、ドラゴンの説明書あるあるなのですが、元が香港のメーカーだけに所々「ん??」ってなるような表記があったりします。たとえばブラウンがプラウンだったり。
塗装例では光と影の迷彩が描かれていた
説明書にも塗装例やデカールの貼り付け例は記載されていますが、こちらは別紙の塗装・デカール貼り付け例。
塗装例では「アンブッシュ迷彩」とか「光と影の迷彩」と呼ばれる、迷彩模様の上にポツポツと斑点が描かれた独特なパターンの迷彩模様を再現しています。
ドラゴンやタミヤでも言えることなのですが、せっかく迷彩やデカール(砲塔番号)の組み合わせの例を用意してくれるのだから、その車両の詳細をもう少し記載してほしいなと思うところ。
ドイツの軽駆逐戦車「ヘッツァー」とは
さて、ヘッツァーのキットについて紹介しましたが、ここで「軽駆逐戦車 ヘッツァー」がどんな車両なのかについても解説します。
戦車模型やミリタリーが好きな人やガルパンおじさんにとっては「あぁ、アレね」ってなるヘッツァーですが、知らない人にとっては「何それ?」となるはず。
38式軽駆逐戦車ヘッツァー(けいくちくせんしゃヘッツァー)は、第二次世界大戦時のドイツの駆逐戦車。ドイツ語では Jagdpanzer 38(t)と呼ばれる。制式番号は Sd.Kfz.138/2 。
ヘッツァー(独:Hetzer, 狩りの勢子)というニックネームは本来、次世代軽駆逐戦車であるE-10計画用のものであったが、いつの間にか本車のものになっている。
via : 軽駆逐戦車ヘッツァー – Wikipedia
この軽駆逐戦車 ヘッツァーは「軽駆逐戦車」とあるように、対戦車戦闘を想定した車両で、厳密に言うと「戦車」とは違うカテゴリーの車両となります。
この戦車と駆逐戦車(および突撃砲)の違いについては後述しますが、まずはヘッツァーがどういった経緯で誕生したのかを簡単に解説します。
ヘッツァー誕生の経緯
連合軍の爆撃でアルケット社の工場が一時的に機能停止に
『3号突撃砲』を製造を担当するアルケット社のシュパンダウ工場(ドイツ・ベルリン)が連合軍の爆撃によって一時的に機能しなくなります。
第二次世界大戦中のドイツで、最も大量に作られた戦車は「4号戦車」ですが、戦車を含めた”装甲戦闘車両”というカテゴリでは、3号突撃砲が大戦中のドイツにおいて最大の生産数となります。
大量に製造されるということは、(もちろん多少の改良はありますが)それだけ3号突撃砲が優れた車両だという裏付けになるわけで、製造不可となると大打撃なわけです。
BMM社に「アルケット社の代わりに3号突撃砲を作れ」と打診
こりゃマズいと思ったドイツ陸軍の最高司令部は、チェコにあるボヘミア・モラビア機械製造会社ことBMM社に、「アルケットの代わりに3突作れへんか?」と打診しました。
しかし、BMM社からは「3号突撃砲クラスの重量を扱える機材や設備が無く、小型の車両しか作れない」という報告が返ってきます。
そのためヒトラーは、BMM社に以前から製造していた10トン級の軽戦車である『38(t)戦車』をベースにした突撃砲を製造しろと命じます。
そういった諸々の事情を経て、3号突撃砲の代替あるいは後継としてヘッツアーが開発されるのでした。
ただし、ヘッツァーは38(t)戦車とは別物であるという点に注意
“38(t)戦車ベースの突撃砲を作れ”という指示はあったものの、実際のヘッツアーは38(t)戦車の発展型であり、”ルクス”こと「II号戦車 L型」との競争で不採用になった『新型38(t)戦車』の部品の一部を流用したものです。
この『新型38(t)戦車』は、足回りこそ38(t)戦車とよく似ていますが、寸法や形状など微妙に違う別物であり、
- 転輪の直径が775mmから825mmへ拡大
- 起動輪の歯の数が19から20へ増加
- 誘導輪の形状や直径(535mmから620mmへ)変更される
- 履帯のパターンおよび幅(290mmから305mmへ)が変更される
- シャーシのサイズなどが異なる
…など、従来の38(t)にはない部品が使われています。
しかし、足回りが38(t)戦車とソックリだったため、資料が少なかった昔はヘッツァー=38(t)戦車をベースにした車輌という間違った解説がなされており、一部の模型メーカーも38(t)のパーツを流用するというポカをやらかしたとか。
なお、ガルパンおじさんはご存知かと思いますが、戦車が出てくるアニメ『ガールズ&パンツァー』にもヘッツァーが登場します。
最初は38(t)戦車B/C型として登場しますが、後に「義援金が集まったからヘッツァー改造キット買ったぜ!」と、それまで使っていた38(t)戦車の上部をヘッツァーと交換するという無茶なことをしています。
作中に登場するキャラ(小山柚子)がこの改造について「結構無理やりよねぇ…」とボヤいていますが、これは先述の「誤解」をほのめかした伏線です。
上のgif画像ではいともたやすくヘッツァーに換装していますが、実際はエンジンの位置とかも全く違うので、こんなふうに上部戦闘室だけをガッチャンコして「ハイ、できあがり!」なんてなりません。
おそらく、作中に登場する戦車の修理やカスタムを担当する「自動車部(=レオポンさんチーム)」があらかじめ加工したに違いありません。
ヘッツァーのスペック
全長 6.27 m
車体長 4.87 m
全幅 2.63 m
全高 2.17 m
重量 15.75 t
懸架方式 リーフスプリング
速度 路上最大42 km/h
路外平均15 km/h
行動距離 177 km
主砲 48口径7.5cm PaK39 L/48(41発)
副武装 7.92mm MG34機関銃
装甲 車体前面上下60mm、側・後面20mm、底面10mm
エンジン マイバッハ Hl 203 P 30 4ストローク直列6気筒液冷ガソリン 160馬力
乗員 4 名
via : 軽駆逐戦車ヘッツァー – Wikipedia
装甲戦闘車にありがちなゴッツイ車体というよりは、ノッペリしているのが特徴で、砲塔が無いだけに車高は低くなっています。
また車体の装甲は垂直ではなく斜めになっているので、本来の厚さ以上の防弾効果(=傾斜装甲)が期待できる反面、車内は狭かったそうです。
搭載している対戦車砲「7.5cm PaK39 L/48」は、長砲身のⅣ号戦車(F2型以降)と同等クラスでしたが、搭乗員から見て右側に位置するため、車体のバランスが悪かったり、右側が死角になったりといった不具合もあったそうです。
戦車・突撃砲・駆逐戦車の違い
ヘッツァーは軽駆逐戦車ということで、駆逐”戦車”とあるけど厳密にいうと戦車ではありません。
知らない人からすると「みんな戦車じゃーん」と一蹴されそうですが、これらは戦場での運用目的や、管轄兵科の違い(兵科間の縄張り争い)などの事情などによって分類されます。
なので名称上の分類はあるものの、実際のところ結構曖昧だったそうです。
ざっくり説明すると、
- 戦車 : 強力な砲と分厚い装甲を持ち、敵戦車と殴り合う戦場の華。回転式の砲塔を持っている。もちろん戦車科。
- 自走砲 : 早い話、大砲を動かせるようにしたもの。遠距離から砲弾を山なりに飛ばして敵の陣地や兵士を広範囲に攻撃。遠距離から攻撃する関係で戦車のような素早さや防御力は必要とせず、砲塔はなく、装甲も戦車に比べると薄かったり天蓋が無かったりする。
- 突撃砲 : 砲塔のない戦闘車両が砲兵科に配属されると突撃砲になる。基本的に歩兵への火力支援が目的だが、歩兵戦・塹壕戦から戦車戦に変わるにつれ、対戦車戦闘も求められ、装甲を厚くしたり長砲身の戦車砲を搭載。ドイツ特有の分類で、他国では「歩兵戦車」がその役を担っていた。
- 駆逐戦車 : 砲塔のない戦闘車両が戦車科に配属されると駆逐戦車となる。こちらは当初から敵戦車を撃破するのが目的で開発・運用される。
戦車と違って、ドイツの自走砲や突撃砲、駆逐戦車は回転式の砲塔を持たず、砲身は固定式(多少は上下左右に動くものもあるが、照準を合わせるときは車体ごと動かす必要がある)である場合が多い。
なので戦車のように素早くは照準を合わせることができませんが、その反面、
- 砲塔が無いぶん戦車型より低コスト
- 砲塔が無いので戦車型より車体重量が軽い
- 戦車型よりも強力な主砲を搭載できる
- 車高が低くなるので隠蔽率・回避率がアップ
といった固定式戦闘室ならではの利点もあります。
特にドイツにおいては前線の戦車の不足を補うために、こういった自走砲(対戦車自走砲)や突撃砲、駆逐戦車が開発され、新規に作られたものから既存の戦車の一部を流用したものまで様々です。
また、ドイツはどんどん劣勢に追い込まれていく関係で、「待ち伏せ」の戦術を取ることもあり、車高が低い駆逐戦車(および突撃砲)が活躍しました。
まとめ
実を言うと、ヘッツァーの他にもう1つ作ろうと思っていた”候補”があり、どちらを先に作ろうか迷っていたので、またまた知り合いがやってたツイキャス以下のようにコメントして決めました。
「PaK39」および「KwK40」とは、それぞれ駆逐戦車(および設置型の対戦車砲)や戦車などに搭載する砲の名称です。
…が、いずれも1つの車輌に特化した砲ではなく、様々な車輌に使われているので、戦車に詳しい人でも砲の名称(口径すら書いてないので更に悪質)だけ言われても何を作るのかは特定出来ません。
なので我ながら相当イジワルな質問をしたと今は反省したフリをしています。
で、何の予告もなく理不尽な質問をぶつけられた知り合いの配信者は「PaK39」と答えてくれたので、今回はヘッツァーを作ることに決定した次第です。
なお「KwK40」が何の車両なのかについては、作る時になったらお教えしようと思います。ふはははは。
というわけで、次回からヘッツァーを作っていきます。こうご期待。