先日、みんな大好きタミヤのプラモデル『ドイツIV号対空戦車 ヴィルベルヴィント』を”また”購入したので、今回から製作に入ります。
ヴィルベルヴィント製作日記1発目である今回は、
- 転輪の組み立て
- 車体の合体
- ツィンメリット・コーティング
- 「2cm Flakvierling38」の製作
といった内容をお送りします。
説明書に従ったり従わなかったりな手順ではありますが、作ってる時に気づいたことや注意点、実物車輌の仕様などについて解説を交えながらまとめてみました。
↑タミヤのヴィルベルヴィント製作日記はこちらにまとめました。
転輪の組み立て
ではではヴィルベルヴィント製作スタートです。よろしくお願いします。
説明書を見ると「フロントパネル」および「リアパネル」の組み立てからスタートとなっていますが、説明書の指示はスルーして、数が多い「転輪」から取り掛かります。
パーツをランナーから切り離し、ゲートやパーティングラインを処理して、接着剤を塗って接着…といったプラモデル製作の基本動作をここで繰り返し行います。
転輪(予備含む)、上部支持輪、起動輪、遊動輪が出来上がりました。
「転輪」は2つのパーツを貼り合わせて作りますが、中央のハブキャップは1943年9月より前に使われていた鋳造タイプになっていました。
次に「上部支持転輪」はフチがゴムになっているタイプ。鋼鉄製転輪に変わる1943年10月より前に生産された4号戦車(H型)に見られる仕様です。もちろんゴムなので後ほどタイヤっぽく塗装します。
また、「遊動輪」は従来型のパイプタイプが用意されており、「起動輪」は説明書によると”初期型”および”通常型”から選択しろとあります。
起動輪は初期型と通常型どっちを選べばいい?
先述の通り、ヴィルベルヴィントの「起動輪」は“初期型”または”通常型”のいずれかを選択して組み立てます。
…が、「初期型? 通常型? どっち選べば良いんだろ??」ってなったので、私なりに調べてみました。
「そんなんどっちでもええやん」って思うかも知れませんが、実はこの起動輪(最終減速機カバー)はヴィルベルヴィントの母体である「4号戦車」がG型かH型以降かを見分ける重要な部分です。
『グランドパワー2015年12月号』に以下のような記載があります。
H型の最終減速機カバーと起動輪は装甲強化の改良が行われ、形状が変更されている。これらはセットになっており、内部機構も変更されたので起動輪の取り付け方式も以前とは異なり、起動輪のみをG型用と交換することは出来なかった。
新型の最終減速機と起動輪の採用が「4号戦車 H型」における最大の特徴となっており、特に並行生産の関係で外見が酷似している「G型最後期型」と「H型極初期」を見分ける手がかりが「最終減速機カバー」の形状とのことです。
ここでヴィルベルヴィントの最終減速機カバーを見てみると、G型まで使われていたものではなくH型以降のタイプになっています。
なので互換性の関係でH型初期から導入された「通常型」の起動輪を選択しました。
書籍やネットの4号戦車の写真を見てると、G型は「初期型」の起動輪なのに対し、H型以降はやはり「通常型」の起動輪でした。
という具合に、起動輪のパーツ分岐に関して深く掘り下げておりました。
上下車体の組み立て
説明書の記載に従ったり従わなかったりしてフロント / リアパネル、前面装甲板、フェンダー類など大きいのパーツを取り付けて車体の大まかなシルエットを完成させます。
タミヤのキットは非常に精巧に出来ているので仮組みでも隙間がほとんどありませんが、念のため上の写真のようにマスキングテープをキツめに貼って、接合部に流し込み接着剤を流して貼り合わせます。
なお本来、上下車体を合体させる前に細かいパーツ(車載工具やマフラーや牽引装置など)を取り付けろと指示がありますが、後述する「ツィンメリット・コーティング」をする関係でそれらは全て後回しにしています。
ツィンメリット・コーティング
ヴィルベルヴィントは戦場から戻ってきた4号戦車を流用しているので、個体によっては車体に「ツィンメリット・コーティング」が施されている場合もあります。
ツィンメリット・コーティングは、磁石を使用した吸着地雷への対抗策として装甲板の上に塗布される非磁性体のコーティングで、これによって装甲板に磁石が引っ付かなくするようにしたもの。
1943年9月から各戦車やそれら戦車をベースにした駆逐戦車、突撃砲、対空戦車などに塗布されましたが、後に敵が吸着地雷を使わないことがわかり、重量や手間が増えるという理由で1944年9月に廃止されました。
日の目を見ることが無かったツィンメリットコーティングでしたが、ドイツ戦車特有の仕様であり、模型で再現する作業も楽しいので私は良くやっています(コーティングがされてない車輌に間違ってコーティングしたことも…)
というわけで、今回のヴィルベルヴィントもツィンメリット・コーティングが施された4号戦車をベースにしているという体で車体にコーティングを施します。
ツィンメリット・コーティングの再現は何種類かありますが、私は昔からやってるポリエステルパテ&コーティングブレード方式を使います。
使用した道具はタミヤのポリエステルパテ、コーティングブレードセット、ラッカー溶剤、あとはパテを混ぜたり塗ったりするのに使う爪楊枝。
まずはコーティング剤ことポリエステルパテを作ります。主剤と硬化剤を同じ”長さ”だけ出してしっかり混ぜ合わせます。
昔この「同じ長さ」を何故か同じ”量”と脳内誤変換して「容器の大きさ違うのに同じ量なわけねーだろ!」ってなってた時期がありました。懐かしい…。
混ぜたパテが納豆に付属するカラシみたいな色になったら準備OK。
あとは車体に塗りたくり、コーティングブレードを使ってピッチを刻み込んでいきます。
…ただ、写真を見て分かるように、点検ハッチのモールドが埋まってます。本来コーティングはここまで肉厚ではなく、パネルのラインやボルトといったモールドはちゃんと出ています(というか出てないと点検できん)。
なので、一旦コーティングをしたらモールドを復活させるのを忘れずに。
なお、ツィンメリット・コーティングは原則、車体の上面や底面にはしなかったそうですが、今回は「コーティング剤が余った」ということで車体上面の前方に少しだけコーティングしました。
ツィンメリットコーティングは基本的に組み立て工場で塗布しますが、部隊側で塗布することもあったようで、その場合独特な模様だったりシュルツェンにも塗布するなどあったようです。
同じ要領で車体後部もコーティング。デコボコしている車体後部が一番やりづらいので、ブレードの一番小さいやつを使ってチビチビと刻んでいきます。
車体や砲塔の面積が大きく、平らな部分が多い「ティーガー」や「パンター」ならパテを使ったコーティングもしやすいけど、小さいクセにモノがゴチャゴチャ付いてる4号戦車じゃコーティングも大変。
なので、もし次4号系列にツィンメリット・コーティングする時はタミヤが出してる「コーティングシート」を試そうかなと思います。あれ確かJ型用だけど、上手いこと使えばH型にも応用できると信じて…。
「2cm Flakvierling38」の組み立て
続いて、ヴィルベルヴィントのメインウェポンである「2cm Flakviering38」の製作に入ります。
実物と同じように砲身(砲架)が上下に可動するのはモチロン、砲身の上下に連動して照準器も角度が変わるというなかなか高度なギミックになっています。
それらのギミックを潰さないように接着する場所に注意したり、パーツを保持してなおかつ可動させる「焼き止め」など、ちょっと難易度の高い技法が要求されます。
そういったところを注意深く見ていきながら作っていきます。
砲身は「RBモデル」の金属砲身を使用
2cm Flakvierling38は、大まかに”砲”である4つの「2cm Flak38」と、そのFlak38を支える「砲架」で構成さており、まず最初は2cm Flak38を作っていきます。
キットでは2cm Flakl38本体と弾倉の2パーツで再現されていますが、今回は「RBモデル」の金属砲身を使うので、この金属砲身を取り付けるための加工をします。
こちらがRBモデルの2cm Flak38の金属砲身。これを4つ購入しました。
砲身部分と先端のマズルブレーキ、砲身基部に取り付けるパーツがセットになっています。
キットの2cm Flak38と金属砲身を並べるとこんな感じ。
キットのFlak38はマズルブレーキから砲身、機関部までが1つのパーツで再現されています。そのため金属砲身と交換する場合、キットの砲身をカットする必要があります。
金属砲身はマズルブレーキが非常に精巧で、砲口の穴はもちろん、側面にある無数の穴や根本の四角い穴までしっかり再現されています。また金属なので耐久性も高く、指で砲身を動かしてポキッ!…なんてこともありません。
過去に作った1/48のヴィルベルヴィントは砲身が折れては接着を繰り返してただけに、砲身の細い対空戦車は可能な限り金属砲身を選びたい。
金属砲身を取り付けるとこんな感じ。
Flak38の砲身を根本からぶった切り、断面を整えたら中央にピンバイスで穴を開けて金属砲身の突起を合わせて接着…といった作業を4個やります。
砲身基部の太い部分を切断するので、頑丈なニッパーを使うか、ホビー用の細いノコギリ使ってカットします。私はニッパーと気合で一刀両断してやりました。
また、金属パーツなので接着剤は金属用のものを使います。
砲架の組み立て
2cm Flak本体の次は、砲を乗せる「砲架」の組み立てです。
先述の通り砲身や照準器は可動するので、説明書をしっかり確認して接着する場所としない場所に注意しながらパーツを取り付けていきます。
砲身と照準器は、これらの2つの動きをリンクさせるため、細長いパイプ状のパーツで接続します。
このパイプ状のパーツは”外れないように固定するけど可動させるため接着しない”という、なかなか複雑なメカニズムになっており、それを実現するため「焼き止め」という技法を使います。
焼き止めの手順は
- パイプ状パーツの輪っかを砲架・照準器アームのそれぞれの突起に差し込む(接着しない!)
- コンロなどで先端を熱したマイナスドライバー等を突起に当てて少しずつ溶かして潰す
- パイプが抜け落ちず、なおかつ可動してくれたら完成!
という感じ。
プラパーツの突起部分を溶かして潰してフタをするという作業となり、潰しが甘いと抜け落ちるし、潰しすぎるとアームにくっついて動かなくなる…と、なかなかシビア。
ヤケドと火事にだけ気をつけて焼き止めをしていきます。
また照準器アームの関節部分も可動に関わってくる部分で、2つのアームをピンのようなパーツ(パーツNo:F3)を通して”外れず動く”という状態にします。
このピンは説明書では”接着しない”とありますが、外れないようにしてなおかつ動かすためには、ピンの先端にだけ接着剤をつけて固定します。
…ところが、接着に失敗したのか、何故かピンのヘッドの部分だけ接着という状態に…。全部くっついてアームが動かなくなるよりはマシですが、これだと砲身を動かすたびにアームが外れます。
なので対策として、内側の突起にマスキングテープを薄く巻いて厚みを出してやったら外れなくなりました。…むしろこっちの方が安全だったり??
そんな具合に可動部分だけ注意してパーツを取り付けていき、無事に2cm Flakvierling38が出来ました。もちろん砲身は上下に動くし、それに合わせて照準器の角度も変わります。文句ナシ。
砲身は頑丈な金属砲身なので安心して動かせるし、先端のマズルブレーキの質感も最高。強いて文句を言うならば撮影がヘタクソなせいでブレまくったくらい。
まとめ
転輪から始まり、車体の合体にツィンメリットコーティング、2cm Flakvierling38の組み立てといった感じで今回は進めていきました。
タミヤのキットなだけに組み立て自体はとても楽でパーツの相性も良好、2cm Flakvierling38に使用したRBモデルの金属砲身もしっかり取り付ける事ができました。
なので、組み立てに関しては順調でした。
…ただ、先述の通り、「起動輪」の検証で意味わからんほど時間食ってしまい、2週間くらい投稿が遅れてしまいました。これがプラモ沼(戦車沼?)の末路です…。
先述の通り、起動輪と最終減速機(および最終減速機カバー)はG型からH型に変わる際に新型に変わっているとのことで、外見が酷似している4号戦車(G~J型)を識別する手がかりの1つとされているほどです。
しかし、この最終減速機カバーの形状が自分の中でピンと来なくて、起動輪の選択については「資料を参考にここまで書いたけど本当に正しいんだろうか…」という状態でした。
他の組み立てについてはササッと作成できましたが、この「起動輪どっち選べばいいの?」検証でネットでググったり「グランドパワー」を始めとする4号戦車関連の本を読み漁ってたせいでバカみたいに時間が掛かりました。
こと4号戦車は第二次大戦を通じ、大小様々な改良を加えて生産され続けてきた車輌なので、時間はかかったけどこういった検証もまたミリタリー模型製作の楽しみの1つだと思います。