先日購入したサイバーホビー(ドラゴン)の「4号戦車 J型(中期型)」の製作をスタートします。
今回は車体下部および足回りを完成させるところまで進めていきました。
極めてバリエーションの多い4号戦車の中でも時期によっ仕様が変わるJ型なので、仕様の変更点についても記事では触れていこうと思います。
なお、4号戦車 J型のキットの紹介を含め、製作日記は以下から読むことが出来ます。
転輪の組み立てでさっそく分岐が出る
戦車模型の組み立ては大体が転輪の組み立てから始まります。
ティーガーとかパンターでは大きい転輪を交互に挟み込むレイアウトになってますが、4号戦車の場合は、下に走行転輪、上には上部支持輪、前方に起動輪、後方に遊動輪といった構成になっています。
いずれにせよパーツ数が多く同じ作業の繰り返しとなるので、ゴリゴリHPを削られる最初の関門であることは間違いナシ。焦らずじっくり作っていきます。
ちゅーことで、説明書は1番からスタート。
早速この転輪の組み立てから実物の4号戦車 J型の特徴でもある”部品の簡略化”が伺えるので、そういったところにも触れていきます。
また、今回のキットは履帯がマジックトラック(連結式)なので「ロコ組み」をします。そのため転輪は車体に接着せず、仮組みの状態で進めます。
最初は起動輪の組み立てから
まずは前の方に取り付ける「起動輪」をつくります。
一番最初のパーツだからか、2つのパーツを張り合わせるだけで楽勝。特にこれと言った注意点もなく簡単に出来上がります。
強いて言えば、左右のギザギザを揃えておくことぐらいですね。履帯(履板)パーツを噛ませてズレがないかチェックしておきます。
遊動輪は旧型と新型のどちらかを選ぼう
今度は車体の後ろの方に取り付けられる「遊動輪」を作ります。
上の写真を見て分かるように「2つのうちから好きな方を選べ」という苦渋の選択を強いられます。説明書にメモってあるように、従来型であるパイプタイプと、簡略化された鋳造タイプの違いです。
H型では前者が多かったのですが、J型になると鋳造タイプの遊動輪が使われるようになったとのこと。
どっちか迷った時は

ブルガリアの軍事史博物館に展示されている4号戦車 J型 via : Wikipedia
…ただ、一方で上の写真のように上部支持輪が3つになった末期型のJ型にパイプの遊動輪がついたケースもあります。各工場の方針や部品の在庫状況によって異なるみたいです。
そういったことから、特定の個体を再現する場合でもない限り、パーツ選びで頭を悩ます必要はないと思います。
また上の写真をよーく見ると、上部支持輪も旧型のものと簡略化されたものがゴッチャになっていますよね。
空襲で工場が爆撃されたり部材調達が滞る中で「あるものから使え」というように、大戦末期の逼迫したドイツの状況がこの4号戦車 J型には反映されています。
で、今回は箱絵と同じように鋳造タイプの遊動輪を装着しますが、せっかくですからパイプタイプと鋳造タイプの両方を組み立てます。使わない方は取っておけば良いからね。
パイプタイプの遊動輪
パイプタイプの遊動輪は起動輪と同じように2つのパーツを組み合わせるだけで出来上がります。実に簡単。
今回は組み立てるだけで車体に取り付けませんが、いつかこいつを使う機会があるかもしれないので大事に保管しておきます。
鋳造タイプの遊動輪
鋳造タイプの遊動輪は実物は製造工程が短縮された簡略版ですが、プラモとなれば話は別。さっそくエッチングパーツが登場し、パイプタイプよりパーツ数・工程数が多くなってます。
まずはこのエッチングパーツの外周をカッターナイフなどでバツンと切り落とし、強度を保つために内側にあるパーツを残したままゲートをヤスリがけします。
ヤスリがけは力を入れるとパーツがヒン曲がるので撫でる程度、いや触れる程度で優しく削っていきます。
内側のランナーも削り、ヤスリがけをするとワッシャーのような丸い輪っかになります。
サバゲー用の電動ガンを扱ってた私としては、アウターバレルの間に挟む「シム」を彷彿させます。
何にせよ言えることは薄いエッチングパーツで形状が形状なので、ちょっと力を入れるとすぐに歪みます。接着するまでは気を抜かずに扱いましょう。
整形したエッチングパーツは遊動輪の内側に合わせて貼り付けます。普通のプラモ用の接着剤では引っつかないので、瞬間接着剤を使います。
エッチングパーツの数ヶ所に接着剤を点付けして遊動輪に固定して、つぎに伸ばしランナーなど細長いもので接着剤を取って、パーツ同士の隙間にすり込むように接着しました。
このエッチングパーツによって遊動輪の「コ」の字型の溝を再現することが出来ます。こういった細かいモールドはプラでは再現できないのでエッチングパーツさまさまです。
………ただ、言えることは、
簡略化つってんのに全然簡略化ちゃうやん!
実物とプラモデルとのギャップに嘆くのでした。エッチングパーツ苦手な人は素直にパイプタイプを使っときましょう。
というわけで先に書いたように、今回はこちらの鋳造タイプの遊動輪を使っていきます。
「上部支持輪」の従来型と簡略型の違い
お次は上部支持輪(上部転輪)。
こやつも旧型と新型の2つが用意されており、違いは補強リブの有無にあります(補強リブがある方が旧型)。
箱絵ではリブのない新型が使われているので、今回はそちらを使います。旧型はH型とか作る機会があった時に使おうかな(普通にキットのパーツ使うけど)。
組み立ては新旧どちらも2つのパーツを組み合わせるだけなので簡単でした。
ちなみに、今まで作ってきた「4号対空戦車」の上部支持輪は以下のようになってました。
- ヴィルベルヴィント(タミヤ):リブあり
- オストヴィント(ドラゴン):ゴム縁
- メーベルワーゲン(タミヤ 3.7cm Flak43搭載型):リブなし
- メーベルワーゲン(タミヤ 2cm Flakvierling38搭載型):リブあり
- クーゲルブリッツ(ドラゴン):リブなし
走行転輪の組み立て
お次は最も数が多い走行転輪を組み立てます。
こやつも3つのパーツを組み合わせるだけなのでコレといった説明は無いですが、いかんせん数が多いので作業ゲーです。めげずに一個ずつ作っていきましょい。
フォマーク工場で働くミハイル君は時給1,050円でこの走行転輪を作っています。
転輪以外のパーツも忘れずに
説明書の1番は転輪の組み立てがメインでしたが、それ以外のパーツもあって上の写真のようなゾウの顔面みたいなパーツを作りました。
これは何かと言うと、メンテナンスなどで車体を吊り上げる際につかうフックで、車体や砲塔の側面に取り付けます。
この時点では鋳造のフックですが、もうちょっと時期が進むと金属棒をU字に曲げたような簡易版が車体の前面装甲に取り付けられるようになります。
小さいパーツに「し」の形をしたパーツを取り付けるので神経を使うし、砲塔用と車体用でパーツが異なるので紛失・混同を防ぐべく、マスキングテープに貼り付けておきます。
フロント・リアパネルの組み立て
続きましては車体下部の前後のパネルを組み立てていきます。
パーツの選択を強いられた転輪と比べるとパネルはパーツの選択はありませんが、車体の後部にあたるリアパネルは4号戦車J型(中期生産型)の特徴でもある”縦置きの排気管”が装着される場所です。
この段階ではまだ排気管はつきませんが、その土台となるリアパネルおよびフロントパネルをじっくり作っていきましょう。
リアパネルの土台を作ろう
まずは車体後部のリアパネルから取っ掛かります。
車体の後ろ側となる部分ですが、4号戦車 J型(中期生産型)の特徴が見られる部分なので解説しながら組み立てていこうと思います。
「穴」は開けたらダメ!
ということで説明書は2番目。C8のパーツに穴を開けろと指示があります。
しかし、この穴はH型やJ型の初期の横置きマフラー用で、縦置き排気管タイプ(J型の中期生以降)では穴は開けません。
いきなりドラゴンクオリティ(説明書が不親切orトラップ)に見舞われるところでした。
もし万が一トラップに気づかずに穴を開けてしまった人は
- 伸ばしランナーを穴にぶっ刺し栓をするように接着する
- 完全に固まったら根本を少しだけ残してカット
- 400番の紙ヤスリで削って平らにする
といった方法でリカバリーします。
ちなみに「開けちゃダメな穴」ってのがこやつ。パーツの裏側に「ここを開けるんやで」と言わんばかりに4つの半穴があります。
しかし、それは連合軍が仕掛けた罠なのでスルーしましょう。穴を開けるのは敵の戦車と防衛ラインだけで十分です。
リアパネルの組み立て
説明書のトラップを回避できた人も、回避できず泣く泣く穴を埋めた人もリアパネルの組み立てに入りますよ。
リアパネルのベースとなるパーツは3つで出来ていて、まずはこれらを合体させます、
また、リアパネルの下の方には牽引装置があるので、そいつも忘れず組み立てます。
牽引装置は3つのパーツで構成されていて、組み立ては簡単ですが、パーツがどこにあるのかわからず、探すのにやたら時間がかかりました。
- B9のパーツは全く違う形状のパーツ…と思いきやBのランナーは2つあった。
- H59のパーツを探そうとランナーの端っこを見たらH58で終わってた(H59はH20の上にあった)
…という具合に、鬼配置だったわけです。
そんな牽引具を取り付けるとリアパネルはこんな感じになります。
そういえば今回はリアパネルの牽引具は1種類だけですね。オストヴィントの時は3つから選んだ記憶があります。
よし、リアパネルを車体下部シャーシに取り付けます。
なるべく隙間ができないように調整しながら流し込み接着剤で結合。
お次はフロントパネルをつくろう
後ろが終わったので今度は前。「フロントパネル」を作っていきます。
説明書は3番ですね。このあたりはまだまだパーツ数が少ないのでわりとスッキリした図になっていますが、その下に少しだけ見えている図を見ると…………うっ!!
フロントパネルには牽引装置を取り付けます。この牽引装置は3つのパーツで構成されています。
基部となる四角いパーツはともかく、そこに取り付ける牽引具のパーツは左右で形状が異なるので、基部に差し込むツメの幅が広い方を内側に来るようにします。
また、この牽引具にピン(パーツはA30)を通しますが、位置関係が悪いと上手く通らない場合があります。あらかじめピンの穴を広げておくと良いかもしれません。
これでフロントパネルも完成したので、車体下部に貼り付けます。
なお起動輪が取り付けられる部分には装甲板パーツが取り付けられます。
この時期のJ型はまだ車体の前面装甲板に牽引装置がついていますが、時期が進むと牽引装置は無くなり、代わりに装甲板の張り出しに穴を開けた簡易なものに変わります。
サスペンション基部を取り付ける
車体の前後にパーツを取り付けたので、左右にもパーツを取り付けておこう。
ということで、説明書の4番に進みます。
ここでは車体の側面に起動輪の減速機カバーやサスペンションの基部となるパーツをひたすら取り付けていくだけの単調作業です。
サスペンションを可動式にする場合
ちなみに今回の4号戦車 J型のサスペンションは固定されていますが、パーツにちょっとした手を加えるとサスペンションを可動式にすることが出来ます。
具体的には
- サスペンション基部パーツにある(アームを固定するための)突起2本を切除する
- 下にある三角形の突起は残しておく。
- アームをサスペンション基部に起き、上からカバーで挟み込むように接着する
- 接着は基部とカバーのみで、アームには接着剤をつけない。
といったひと工夫をパーツに施すことで、サスペンションアームが左右にカクカク動く可動式にすることが可能となるわけです。
可動式にすることで地形に順応した足回りを再現することができるので、ジオラマやビネットといった情景作品を作る人や、可動式履帯や金属履帯を使う人は覚えておきたいテクニック。
今回は付属のマジックトラックを使うので可動式にはしませんが、モデルカステンの履帯を使う機会があったら試してみます。
2本の排気管は4号戦車 “J型”の特徴
さて、作業は再び車体後部へのパーツ取り付けに戻ります。
できるならあちこちワープせず、車体の後ろなら後ろを重点的に攻めていく方がブログ的には映えますが、説明書の順序に従いながらの組み立てなのでバラバラに…。
…愚痴っても仕方ないですが、ここでやることは主に以下の2つ。
- 遊動輪基部の取り付け
- 排気管の組み立て・取り付け
説明書は5番目に入ります。ここで注目したいのは、4号戦車 J型の中期生産型の特徴でもある「排気管」のパーツ。
4号戦車 J型は1944年8月以降の生産車両では横置き型のマフラーが廃止され、2本の簡素な排気管に変わったとされており、今回のキットでもその特徴が出ています。
遊動輪の基部パーツを車体に取り付けよう
排気管の組み立てに入る前に、合わせてこのセクションで行う遊動輪の基部パーツを組み立てておきます。
基部パーツは上の写真のように4つの部品で構成されています。ブーメランみたいな「く」の字のパーツは薄く折れやすいので、取り付けはもちろん取り付けた後にも扱いは慎重に。
組み立てた遊動輪の基部パーツを取り付ける前に、車体側に薄い板状のパーツ(ナンバーはB3およびB2)をくっつけておきます。
実を言うと、このパーツの存在を忘れて先に遊動輪基部を取り付けてしまい、妙に隙間が開いてるなぁと頭に「?」を浮かべておりましたが、その正体はこのパーツ。
慌てて基部パーツを引っ剥がしてパーツを取り付けて難を逃れました。危ない危ない。
排気管の組み立て・取り付け
このセクションの最大の見せ場(?)でもある2本の排気管を作っていきます。
排気管はたった3つのパーツだけで出来ていますが、筒と受け具の間にはエッチングパーツを挟むように取り付けます。
このエッチングパーツは両端を直角に折り曲げる必要があるので、カッターナイフの背などをあてがって折り曲げ線が内側に来るよう曲げます。
また、排気管の筒には縦線が入っていますが、これはパーティングラインではなく、実物にも見られるモールドなので間違ってスジを消してしまわないよう注意。
遊動輪基部や排気管を取り付けた4号戦車J型の後部は上の写真のようになりました。
パーツ数が少ないこともあって排気管の組み立てはスンナリ進みます。出来上がった排気管も車体のケツにズブリと差し込むだけでオッケー。とっても楽。
砲塔旋回用のエンジンやらマフラーがゴッソリ撤去されて、マフラーも筒状のものに変わったおかげでえらくサッパリした後部になっています。
サスペンションバーを取り付けてやろう
そして再び作業はサスペンションへと戻ります。
どうしても足回りはあちこち行ったり来たりが多いみたいです。外回りの営業マンみたいですね。
説明書は6番目に入ります。
やたら情報量が多いですが、今回はこのうちのサスペンションの組み立てや車体側面へのパーツの取り付けのみを行います。他は次回に回そう。
なお、説明図では転輪を取り付けろと指示がありますが、「ロコ組み」をする関係でこの段階で転輪一式は接着しません。
予告通りサスペンションを組み立てます。
基部は既に取り付けられているので、サスペンションバー周辺にパーツを取り付けて、車体に固定するといった作業です。
サスペンションには側面に四角いパーツを取り付けるだけ。
ささっとパーツを整形して、側面に四角いヤツ取り付けて、本体側に固定して、あとは上にカバーを被せるといった流れ。数が多いだけで作業自体は楽。
サスペンションと合わせて遊動輪を取り付けるアームや、忘れていた給油口カバーなども取り付けておきました。
せっかくなので、転輪一式を仮組みして撮影。「なかなかいい感じだ」とクルップ社の社員たちも満足げにドイツビールを呷っています。
説明書の6番はまだほかにも組み立てが残ってますが、ひとまず足回りが完成したので一旦ここで区切ります。
まとめ
4号戦車はヴィルベルヴィントからクーゲルブリッツまで「4号”対空”戦車」で予習済みなので、それほど真新しい発見はないだろうなと思っていました。
しかし、実際に作ってみると「J型」ならではの新旧部品の選択や、ドラゴンのキット特有の細かいディテールなどもあって、懐かしさと新発見を実感しつつ楽しく組み立てておりました。
この先は車体上部の組み立てとなり、フェンダーやOVMはもちろん、今まで扱ったことがない「シュルツェン」なども出てきます。車体上部はもちろん、砲塔とかは未知なる領域なので楽しみです。
ただ、仕事が忙しいせいでブログはおろか組み立ても思うように進まず、末期ドイツの生産の停滞とよく似た状況になってます。会社爆発しないかなぁ。アルケット社みたいに。
何にせよチビチビやっていきますので、興味がある方はブクマしてやってください。

次回は引き続き車体下部を組み立てていきます。